2010年 09月 26日
竹中正治氏は、外国為替はこう動く: これから10年の編者および1・2章の著者であり、5章「中国の台頭と人民元の将来」の著者は西村陽造氏でした。 もちろん、ご覧になっているわけがないでしょうが、ここにお詫びと訂正をさせていただきます。 改めて、西村氏の人民元に関する見解に概ね同意します。 #
by guranobi
| 2010-09-26 17:01
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2010年 09月 26日
最後に、竹中氏の論説に対する若干の反論を。 まず、バラッサ・サミュエルソン効果が2010年代に本格化するだろうとの見方には基本的に同意します。しかし、その効果は2010年代後半から2020年代にかけて見られるだろうと思います。 中国のベビーブーマーは国共内戦などの影響から日本よりも10年ほど遅れて生じているため、第2次ベビーブーマーの発生も10年ほど遅れている。新卒供給のピークは現在から10年代半ばにかけて発生し、10年代半ば以降、新卒の供給は次第に減少する。よって、バラッサ・サミュエルソン効果が顕在化するのは10年代後半から20年代にかけてになるだろうと僕は考えます。竹中氏との違いは効果発生の時期のささやかな違いです。 バラッサ・サミュエルソン効果とはおおまかに次のようなものです。 貿易財の生産性上昇は非貿易財よりも高いため、貿易財産業はより高い賃金を提示できる。しかし、労働市場の供給力に制約があるときには、貿易財産業が提示する賃金上昇は非貿易財での賃金をも引き上げる。非貿易財の生産性上昇は貿易財産業を下回るため、非貿易財産業は商品価格を引き上げざるを得ない。結果、非貿易財産業の物価上昇が経済全体の一般物価を引き上げる。 ここで、、、バラッサ・サミュエルソン効果が典型的に見られたのは日本であり、その結果、日本円の実質実効為替レートは90年代なかばまで趨勢的に上昇しました。しかし、その他の新興国、例えば、韓国、シンガポール、メキシコなどでは実質実効為替レートの上昇は見られていないのです。 ですから、中国においてバラッサ・サミュエルソン効果が起きる、ないしは人民元の実質為替の上昇が起きるとは限りません。バラッサ・サミュエルソン効果が実質実効為替レートに及ぼす影響は様々な検証があるようで、引き続き確認を要します。 もう1点は、人民元の国際化、決済通貨としての可能性に竹中氏は疑問を呈していらっしゃいますが、僕は予想以上に早いかもしれないと思います。 竹中氏が人民元の国際化に時間がかかるだろうと考える理由の1つは、貿易決済通貨としての人民元供給について外資系銀行が多くの制約を受けていることを挙げていらっしゃるようです。しかし、これは中国政府が大陸系銀行を支援するためだと考えれば、決して人民元国際化の制約にはならないように思います。まー、この点は解釈次第なのかもしれませんが。 すみません、酔っ払いながら書いているのでまとまりがない内容だったかもしれません。。。。 金利についてですが、固定相場制に近いフローティング・ペッグ制を取っている以上、人民元金利はは米ドル金利に相当程度、追随せざるを得ないと思います。そのため、金利差は資本移動のproxyにはならないと思います。この点もデータに基づく検証が必要な部分です。 あとは、、、もう少しデータの読み込みを行って記事を加えるかもしれませんが、、、ちょっと疲れました。 すみません、以上です。 #
by guranobi
| 2010-09-26 01:44
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2010年 09月 26日
人民元がフローティング・ペッグを維持しつつも、目先は人民元高を続けざるを得ない理由は他にも幾つか。 竹中氏の、準備通貨であるメリットを活かしてドルは持続的な下落を続けるだろう、との指摘は非常に興味深いのですが、これは中国から見ればある程度の経常収支黒字を続けることができるということです。もちろん、ASEANなどの競合国との相対的な競争力次第ですが。 しかし、日本に並ぶGDPに達した以上は外需主導の成長には限りがあり、米国の経常収支赤字に頼った成長を続けることは難しい。よって、人民元高を通じて内需主導の成長に転換することで持続的成長を担保するというのは春山さんも指摘しているとおりです。 また、中国は割安な人民元を維持することで経常収支黒字を確保する一方で、その外準増加圧力を緩和するために対外投資を奨励しています。 野村のレポートが指摘するところでは、中国の資本取引自由化に関する姿勢は 長期から→短期へ 流入から→流出へ 直接投資から→証券投資へ 機関投資家から→個人投資家へ というものです。 実際に中国は対外直接投資を急速に増やしています。 また、野村のレポートによればQDIIの残高がDFIIを上回っているようで、この点でも資金流出が進んでいます。 しかし、恐らくは中国が資本取引規制を撤廃した場合には、中国への資金流入が急増することになるでしょう。その際には再度、流入&機関投資家の流れが起きます。その動きが急激にならないように、相当程度、人民元を引き上げておく必要があるのではないかと思います。 #
by guranobi
| 2010-09-26 01:16
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2010年 09月 26日
次に人民元の過小評価の程度です。 中国の経常収支ないしは外貨準備増減は90年代前半には概ね均衡していました。このことを踏まえると、90年代前半の人民元の水準は均衡レベルにあったと見做せます。 人民元は94年の公定レート一本化以前に、93年に市中レート(調整センター・レート)が40%下落し、それによって90年代半ばの貿易収支はGDP比3%程度に高まっています。このことから、90年代半ばの人民元は40%程度過小評価されていたと考えることができます。 また、90年代前半を均衡水準と考えたときの米中PPIに基づくRMB/USDの相対購買力平価(相対PPP)は40%程度上昇しているはずですが、CPIに基づく実質実効為替レートは20%弱しか上昇していません。ドル円の例では、輸出物価ベースの相対PPPが実際の為替レートとの適合が最も高く、ついでPPIベースの相対PPP。CPIベースの相対PPPは最も説明力が低く、為替レートの実勢よりも割安にとどまる傾向にあります。 このことから、人民元は少なくとも、20%程度は過小評価されていると考えることができます。 あるいは、10年の貿易収支はGDP比3%弱に縮小していますが、足下の月次の貿易収支は09年と同水準の200億ドル/月にまで回復しています。これはGDP比では4%程度であり、均衡水準よりも人民元が相当程度、過小評価されていることをしめしています。 以上の点から、人民元は20-30%、ないしはそれ以上に過小評価されていると考えるのが妥当だと思います。 話がそれますが、 The Balassa-Samuelson Relationship and the Renminbi によると、バラッサ・サミュエルソン効果によって、人民元の実質為替レートは年率2.8%上昇しなければならず、足下(2006年時点)の過小評価40%を加味すると4.8%/年の上昇が必要だそうです。 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 野村のMOF委託レポートのなかで最も重要な情報の1つはこれでしょう。 人民元の自由化は円に対しておおよそ30年遅れているという指摘。 しかし、もし30年遅れているのならば73年のブレトンウッズ体制の崩壊に遅れて2003年には人民元が変動相場制に移行しているハズ。しかしそうなっていない理由は、日本の”失敗”に学んで中国が意図的に国内金融市場の拡充と金利自由化を先行させているためです。 ここで中国の短期金融市場の動向をアップデートすると以下のように。 中国の短期金融市場は足下でも急速な拡大を続けています。日本との比較で、債券のインターバンク現物取引の対GDP比を見ると、中国は10年において162%であるのに対して日本は300-350%程度と見られる。国債発行残高のGDP比率が中国20%、日本180%であることを考慮すると中国の短期金融市場は取引ボリュームの面では十分な発達を遂げていると考えることができます。 この点は僕の理解不足が多々あるとおもうのですが、中国は相当の短期金融市場の厚みを持ってきているのではないかと思います。 中国が他のエマージング市場と決定的に異なるのは、ボリュームではないかと。 小国の開放経済は、どれだけ頑健な資本市場・短期金融市場を持っていても投機資金の一方的な流入・流出に対抗することは難しい。しかし、米欧日のように絶対的なボリュームが大きい市場は、投機的な”仕掛け”に抗うことは、容易いことではないか。だとすると、中国は自国の人民元市場のボリュームを拡大することで相当程度、投機的な動きに対応できるのではないでしょうか。 中国の短期金融市場の急速な成長は、それだけ人民元の自由化・国際化の可能性を高めるものだと思います。 #
by guranobi
| 2010-09-26 00:50
| 為替
2010年 09月 25日
最初に、あまり考えがまとまっていない、というか苦手なw理論的な部分です。 オブズフェルド/テイラーによる国際金融のトリレンマは広く知られるところです。 ①完全自由な国際資本移動 ②固定相場制ないしは為替相場の安定 ③国内目標を実現するための独立した金融政策 この3つを同時に実現することはできないというのがその趣旨ですが、私はこのうちの2つを実現することは可能だと解釈していました。しかしそれは誤りで、2つを実現できるのは非常に限定された場合ではないかと思います。 中国/人民元になぞらえて、②固定相場制ないしはそれに準じるケースで考えると、②を採った場合には、97年のアジア通貨危機ないしは07サブプラ危機後のエマージング通貨の動揺などから、①完全自由な国際資本移動は困難になると考えるべきでしょう。 また、固定相場制のもとではマンデル・フレミングが示すとおりに財政政策は有効ですが、金融政策は効果がない、ないしは非常に限定されます。金融政策を緩和すると自国通貨が下落するため、それを買い支えると同時に外貨準備を取り崩し、自国通貨を吸収することになり、最初の金融緩和効果を相殺します。 すなわち、③の金融政策も、かなりの程度、①固定相場制に従属せざるを得ないのではないか。 これまでの中国は、 ①国際資本移動には制限を加え ②固定相場ないしはそれに準じた制度を維持し ③金融政策は固定相場に従属させる(受動的な金融政策) というものであり、 今後の人民元に関する中国の課題は、 ②為替相場の変動性を高めるかわりに ①国際資本移動を自由化するとともに ③独立した金融政策を確立すること であると思います。 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ よくわかっていないまま書いているので、意味不明かもしれません。 以下、具体的に中国の数値を確認します。 1.人民銀行BS 人民銀行のBSについては、ちょっと古いこのレポートが参考になる部分もありますが、、、 加藤出:準備預金世界一の人民銀行が頭を悩ませる市場のスキル育成 人民銀行のBSは足下では逼迫の度合いを強めているように見えます。 下図は左が資産、右が負債で、上段が実数、下段が対GDP比率です。 外貨準備を外為特会に分離している日本とは違って、中国では人民銀行が外貨準備の主要な保有者であるため、人民銀行のBSは外準の増加に伴って急増しています。足下の6月時点では、人民銀行の資産のうち82%が外貨です。人民元の対ドル切り上げにともなって人民銀行は相当の資本不足になっているはずです。 また、対政府債券はその大部分がSWFへの資産移管に伴うものと推測されるので、これを含めれば実に資産の88%は外貨に関連します。 負債サイドを見ると、外準急増に伴って人民銀行が市中から資金を吸収し、不胎化を行っている姿が分かります。外準が急増し始めた03年には、預金準備率の若干の引き上げとともに、人民銀行債の発行によって市中から資金吸収を行っていました。しかし、人民銀行債には米ドルよりも高い金利を不利しなければならないこと、そして中国の金融市場が未成熟であることによって人民銀行債の発行も難しくなってきました。そのため06年以降は、より強制力の高い預金準備率の引き上げによって市中から資金を吸収しています。 つまり、中国における預金準備率の引き上げは金融引き締めのシグナルというよりも、外準の急増に対応した不胎化政策という側面が強いのです。 この結果、人民銀行の市中オペレーション(公開市場操作)は非常な困難に直面していると思われます。 野村のレポートによれば、そもそも中国における準備率操作は一定期間における平残ではなく、日々の積みによって行われているため、市中金利は変動しやすいそうです。準備預金が巨額に及んでいる一方で、人民銀行が保有する人民元建て資産が少ないため、売りオペによる資金吸収には制約があると思います。 本来ならば、割安な人民元水準を維持する以上は外貨準備が増加することは必然的なので、日本の外為特会のように別会計を設け、外準購入の原資は短期国債等によって市中から吸収すべきです。それによって自動的に不胎化する一方で、人民銀行が短期国債を購入すれば市中に成長通貨供給・資金供給を行うことができ、かつ人民銀行のBSをより健全なものにできるでしょう。 将来的に人民元の柔軟化・国際化を目指すのであれば、金融政策の独立性を確保するためにもそうすべきですし、いずれはそうなるのかもしれません。が、中国がそうしない理由はわかりません。 いずれにせよ、中国における不胎化は公開市場操作によるよりも、準備率変更によって行われるという非常に歪な構造に陥っています。この点も、人民元高を許容して外準を抑制する誘引になるでしょう。 このような人民銀行のBSの動向は、金融政策が固定相場制に従属していることの表れではないかと思います。準備率操作も量的規制ですし、また、貸出制限などの総量規制も量的規制です。預金準備ないしは貸出額≒マネーサプライ供給が主体的におこなれていない。 人民銀行が国務院の下部組織であり、金融政策が事実上国務院によって決定されているという構図も、固定相場制に適合した制度ではないかと思います。 #
by guranobi
| 2010-09-25 19:33
| 為替
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