2010年 10月 03日
さて、IIPはどのように推移するのか、IIPに影響を与える要因とは何か? ここで、再び竹中先生のグローバル・インバランスとドル基軸通貨体制の行方を参考にさせていただきます。 p.60-61においてPTBR(Primary Trade Balance Ratio)という考えを示されているのですが、これは「対外純負債比率(IIP/GDP)が前年比で横ばいとなる貿易・サービス収支/GDP比率」と考えることができ、p.61の③式を変形して次の式で表される。 PTBR = l((1+r_l)/(1+g))-a((1+r_a)/(1+g)-1)・・・③' l : 対外総負債/GDP比 a : 対外総資産/GDP比 r_l : 対外負債のトータル・リターン r_a : 対外資産のトータル・リターン g : 名目GDP成長率 ちなみに、l, a に09年の数値を、r_l, r_a, gに06-09年平均の数値を入れると、PTBRは▲4.7%となる。06-09年平均の資産・債務のリターン、名目GDP成長率のもとでは、米国はGDP比▲4.7%の貿易・サービス収支を続ければIIPの水準は09年と同じ19.4%で横ばいとなる。▲4.7%を上回る赤字を出せばIIPは悪化し、下回ればIIPは改善する。 06-09年平均の数値をベースに各要因のPTBRへの影響を見ると以下のとおり。 対外総資産/GDP比率が上昇(対外総負債/GDPも同率上昇)すればPTBRは低下する。すなわち、より大きな赤字をだしてもIIP/GDP比率を維持できる。あるいは、資産・負債のリターン格差一定のもとで金利水準が上昇すれば、PTBRは上昇する。名目GDP成長率が高まれば、PTBRは低下する。GDP成長率が高まればより大きな赤字を出してもIIP/GDP比率を維持できる。 より正確には、③'式から以下のように求めることができる。 ①r_a > r_l のときに、aとl の同率幅の上昇はPTBRを低下させる。 →資産リターンが負債リターンを上回るならば、貸借両サイドでの拡大はより高い投資収益を生み、IIPを悪化させることなく、より大きな貿易・サービス収支の赤字をだすことができる。 ②l > a のときに、r_l, r_a の同率幅の上昇はPTBRを上昇させる。 →総負債が総資産を上回る(IIPがマイナス)ときには、資産・負債リターンの同率幅の上昇≒金利水準の全般的な上昇は、より低い投資収益となり、IIPを維持するためにはより小さな貿易・サービス収支の赤字でなければならない。 ③a(1+r_a) > l(1+r_l) のときに、gの上昇はPTBRを低下させる。 →資産の総収益が負債の総収益を上回るときに、名目GDP成長率の上昇はより高い投資収益を生み、IIPを悪化させることなく、より大きな貿易・サービス収支の赤字をだすことができる。 このうち、①は特に重要だと思うんですよね。これまでの米国のように対外資産のリターンが対外負債のそれを上回っていれば、貸借両サイドでの(レバレッジ)拡大は当然、米国にメリットをもたらし、大きな貿易・サービス赤字を続けることができる。だけど、いったんリターン格差が逆転すればそれが大きな重しとなり、対外資産・負債の縮小圧力と、貿易・サービス赤字の抑制圧力が同時に働くことになる。 当たり前のことなんですけど。
by guranobi
| 2010-10-03 08:25
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