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2010年 08月 02日
WEO2009を拝借して以前、記事を書きましたが、改めて天然ガス市場を概観すると、、、 ①膨大な埋蔵量・・・可採年数は190年 天然ガスの世界年間消費は3tcm、従来型のガス(コンベンショナル・ガス)の1P可採埋蔵量(Reserves)は182tcmで、可採年数は60年。1Pは確認可採埋蔵量に90%確率の新規発見分を含めたもの。 さらに、50%確率の新規発見分を含めた2Pでは404tcmとなり、可採年数は130年。 コンベンショナル・ガスとは別に、ノン・コンベンショナル・ガス(タイト・ガス、コールベット・メタン=CBM、シェール・ガス)の資源賦存量(Resources)は921tcm。この数値は可採埋蔵量ではないので、回収率20%と仮定すると、184tcm、可採年数は60年。 両者を合わせた可採年数は190年と膨大な規模になる。 豪州、トルクメニスタンなどでの相次ぐ新規ガス田発見、米国でのタイト・ガス、シェール・ガスの本格化は、これらの数値に現実味を与えている。 ![]() ②取引・・・地域間取引は少ない 天然ガスは気体なので、体積あたりの熱量すなわち市場価値が著しく低く、輸送が困難な商品です。 ガスを液化してLNGにすると体積は600分の1になり、さらに天然ガスの同一熱量あたりの市場価格は石油の半分程度なので、常温での同一体積の価値は石油の1200分の1という計算に。 そのため、天然ガスの遠隔地輸送の手段はパイプラインと液化(LNG)に限られるとともに、パイプライン建設も原油パイプラインよりも慎重になりやすい。 天然ガスの貿易量は生産量の30%と、原油の66%よりも低い(BPデータなど)。さらに、天然ガス貿易は(北米、ヨーロッパなどの)地域内取引の比率が高く、地域間取引は生産量の17%程度(2008年、IEAデータ)に過ぎない。 ![]() 地域間取引の内訳を見ると以下のとおり。2008年、単位 bcm/yr。ソースはIEA, Natural Gas Information 2009 上段は地域内取引を含めた、グロスの貿易量。下段が地域内取引を相殺した、ネットの地域間貿易量。 地域内取引は、北米と欧州が大きく、北米ではカナダ→米国がほとんどを占める。欧州内も域内を通過するパイプラインの取引がほとんどだと思われる。このような地域内取引を除くと、天然ガスの取引は非常に限定され、欧州とロシア、アフリカ間の市場、そして日本・韓国・台湾などの東アジアと中東・東南アジア間の市場の2つが主な市場となっている。 ![]() さらにパイプラインとLNGに分けると、取引市場が限定されていることがわかる。また、地域間取引はパイプラインが300bcm、LNGが200bcmとなっている。この規模は、カタールと豪州のLNG生産能力のインパクトを理解するためには非常に重要。 ![]() ③価格動向・・・地域間の価格差が大きい 天然ガスの地域間取引の少なさは、地域別の価格差を大きくしている。 代表的な価格指標である、北米Henry Hubと英国NBPの年平均価格の差は、96年以降の標準偏差が27%と非常に大きい。原油の場合は、例えばWTIとブレントの同期間の標準偏差は3.3%に過ぎない。 また、パイプラインであれLNGであれ輸送コストが相対的に高く事業の不透明要因が大きいため、欧州及び東アジアの天然ガス取引は原油価格に連動して設定されている。そのため、足下の天然ガス価格の低迷にもかかわらず欧州、日本のLNG輸入価格は原油価格の反発に連動して上昇している。 下図は原油価格(ブレント)に対する同一熱量の天然ガス及び石炭の相対価格の推移。 ![]() カタールの超大型LNGプロジェクトは、コンベンショナル・ガス生産が減少する米国と欧州への輸出を主目標とし、割高な地域への輸出を機動的に増やすことによって地域間の価格差を縮小させ、天然ガス市場の統合を進めるものと見られていたが、、、米国のシェール・ガス生産の本格化によってその目論見は見事に崩れ去った。
by guranobi
| 2010-08-02 22:56
| energy
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