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グラの相場見通し

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2011年 05月 18日

原油とガスの欧米価格差③・・・ガス

次いでガス。
北米のシェール・ガス革命については広く知られるところですが、その”革命”は北米限定です。なぜなら、北米からガスを輸出する手段がないから。原油での中西部と同じように、北米全体でガスがダブついている。

JOGMEC: 米国:メキシコ湾岸におけるLNG輸出計画
JOGMEC: カナダ西海岸からのアジア向けLNG輸出計画

米国はカナダからパイプラインでガスを輸入しているが、シェール・ガス革命まではガス不足が懸念されていてLNG受け入れ基地を作りまくっていた。だけど、シェール・ガスが予想以上に低コストで生産され始めると、LNGでガスを輸入する必要がなくなり、LNG受け入れ基地の現在の稼働率はヒジョーに低水準にとどまっている。今は長期契約の輸入を仕方なく行っている程度らしい。

そこで、LNG受け入れ基地を持つCheniere Energy(NYSE: LNG)がシェール・ガスを液化して逆に輸出するべく取り組んでいる、というのが最初の記事の内容。

世界のガス価格は北南米と英国のみがガスの市場価格によって取引されているが、大陸欧州とアジアは原油価格に連動して決められている(ただし、欧州はロシアとの取り決めで3年限定で一部市場価格連動を採用。下のドイツ国境渡し価格と日本のLNG価格の差が10-11年に拡大している一因じゃないかと思う)。
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ここで天然ガスの価格を見比べてみる(ソースはBP statistical review)。ブレント原油価格との相対価格(下図)を見ると、90年代から2008年頃まではガス価格は原油の60-100%程度で推移していた。
しかし、09年以降は興味深い動向を見せている。09-10年には原油連動価格である日本のLNG輸入価格とドイツ国境渡しロシア産ガス価格(German border)は高止まりする一方で、市場連動価格である米Henry Hubと英NBP価格はガス需給の緩和を反映して原油価格以上に低下し、ブレントに対する相対価格も低下した。

しかし、11年に入ってHenry HubとNBPの価格は全く違った動きを示す。Henry Hubの価格が再び下落したのに対し、NBPはドイツ国境渡し価格にサヤ寄せするように急上昇した。このNBP価格の上昇は、原油連動である大陸欧州の価格に引きずられたという解釈もできるが、もう1つの側面もあると思う。
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ここで英国のガスの輸入と、生産・需要動向を見てみる(ソース)。英国はガスの生産が03年から減少し始め、04年から純輸入国に転落した(下図)。その後も国内生産の減少に伴って輸入が増加し続けているが、09年からはLNGが輸入増加をまかなうようになった。
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そして、これはIEA のWorld Energy Outlook 2010に掲載されている欧州の2020年時点でのガス輸入のコスト予想。欧州の消費地に入ってくるガスのうち最も低コストなのはノルウェー沖からのパイプラインであり、次いでアフリカ・中米のLNG、ロシア・ヤマル半島からのパイプライン(BP, ロスネフチの破談の案件)と予想されている。この図から、現在の英国の主要な輸入先であるノルウェー沖と比較して、LNGのコストは3ドル/MBtuほど高いと思われる。そして、高コストなLNGが09年以降の増加を担っていることから、英国が調達するガスの限界費用が急上昇したのではないだろうか。これが、NBPがドイツ国境渡し価格にサヤ寄せして上昇したもう1つの理由じゃないかと思う。
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英国と米国のガスの需給はたぶん、こんな感じに変化した。英国は国内生産の減少にともなって供給曲線が左シフト。需要を補うのは高コストのLNG輸入。対して、米国では国内のシェール・ガス生産の増加が供給曲線を右シフトさせた。この2つの市場は別々に存在している。
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この2つの市場を融合させるのが上のメキシコ湾岸でのLNG液化、あるいはカナダ太平洋岸でのLNG液化計画なんだが、、、そのどちらも順調にいって2015年以降のお話。

その時に米国と英国どちらの水準に価格が収斂するのだろうか?まぁ、ずいぶんと先の話なんだが、米英の差は最大でもLNGの輸送コスト=3-4ドル/MBtuに収まるだろう。現在のスプレッド5ドル/MBtuはやや大きすぎる。

原油市場との違いは、原油の場合には曲りなりにも鉄道やトラック輸送という代替手段があり、その輸送コストが裁定コストとしておおまかながらも機能している。それに対して、ガスの場合にはパイプラインとLNG以外の輸送手段、代替手段が全く無く、米英市場のスプレッドは輸送(=LNG)コストよりも大きく乖離している。だからこそ、メキシコ湾岸やカナダ太平洋岸でのLNG液化プロジェクトが動いているわけだが。

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また、EIAのリサーチのように大陸欧州でのシェール・ガスが大量に存在し、独仏などから低コストのガスが入って来れば英国の供給曲線が右シフトし、米英のスプレッドは更に小さくなるだろう。ただし、その場合にはメキシコ湾岸のLNG液化プロジェクトは採算性が取れなくなり、またもや空振りに終わることになるだろう。。。

これ以外に天然ガス価格に影響を与えるとすれば、原発事故および対石炭との相対価格の優位性からガス発電が本格化するなどの需要サイドの要因が考えられる。

短期的には、北米でのシェール・ガス生産が鈍化する可能性がある。恐らくは北米でのガスの価格が原油と比較してあまりにも低すぎるため、稼働リグがガスから原油採掘にシフトしている模様。
Baker Hughes: Rig Report
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・・・と、つらつら書きましたが、恐らくはエネルギーに詳しい方にとってはあたり前のことかもしれないし、あるいは全く的外れかもしれない。ともかく、原油とガスのスプレッドの背景についての、ど素人の理解はこんな感じなのです。

# by guranobi | 2011-05-18 02:39 | energy
2011年 05月 18日

原油とガスの欧米価格差②・・・原油

最初に原油から。と言っても、人さまからの引用に終始するわけですw

通常、油質の違いが原油価格に影響すると言われます。ナマの原油すら見たことのないど素人なので、その違いも価格への影響の程度も見当がつかんのですが。wikiによるとWTIとブレント、そしてドバイの油質は次のようになっている。

WTI: API度 (API gravity) 39.6, 硫黄分(sulfur) 0.24%
Brent: API度 38.06, 硫黄分 0.37%
Dubai: API度 31, 硫黄分 2%
また、09-10年にかけてOPEC諸国がWTIの代わりに参照価格に採用したASCIは、
ASCI: API度 28.25~30.25, 硫黄分 1.7~2.4%
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ソースは、Argus Sour Crude Index

幾つかの油種の合成指標であるASCIはドバイに近い中~重質油。一方、WTIとブレントはともに軽質油に分類されるが、その違いは僅かなもののように僕には思える。若干、WTIのほうが軽質かつ低硫黄なので、通常はWTIのほうがブレントよりも高品質=高価格と見なされる。

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WTIの相対価格が下落している理由についてだが、この記事の説明が最も詳細で分かりやすかった。
Our Finite World: Why are WTI and Brent Prices so Different?

今回、はじめて知ったことですが、米国の石油関連の統計では本土48州がPADD(Petroleum Administration for Defense District)と呼ばれる5つの地域に分かれている。そして、 WTIの現物引渡しが行われるオクラホマ州クシンを含めた中西部はPADD2に分類されている。
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このPADD2にはパイプラインによって南北から原油が送られてくるが、出て行くパイプラインはほとんどないか、あるとしても容量が小さい。そういう構造のなかで、北部からカナダのサンド・オイルの輸入が増えたほか、PADD2に含まれるノースダコタ州のシェール・オイルの生産が急増したため、PADD2において原油がダブついた。これがWTIの価格を押し下げた、ということらしい。

ft.com/alphaville: WTI’s upcoming ‘Keystone’ problem


実際に、PADD2の原油在庫だけが10年末頃から急増している。
Weekly Petroleum Status Report
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他に参考にしたもの。
Econbrowser: Brent-WTI spread
EIA "Today in Energy FEB 28, 2011": WTI-Brent crude oil price spread has reached unseen levels
ロンドン滞在記:WTI-Brentスプレッドの拡大

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ここで、参考にした記事ではカナダ・エドモントンから伸びるKeyStone Piplineの第一弾が2010年4月に開通したことをPADD2での原油ダブつきの主要因として挙げている。しかし、PADD2の輸入量(ほとんどがカナダから)とノースダコタでの原油生産を並べてみると、ノースダコタの生産が急増していることのほうが影響は大きいんじゃないだろうか?
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これも全く知らなかったんですが、ノースダコタの原油生産は過去3-4年急増を続けていて、今やテキサスに次いで全米第2位の原油生産州となっている。そのほとんどがオイル・シェールから産出されているらしい。知らんかったな~
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しかし、ノースダコタの原油はその輸送コストの高さから他地域よりも大幅なディスカウントとなっている模様。ここで提示されている価格はビッド・プライスなので必ずしも取引価格というわけではないだろうが、WTIよりも16ドル安く、カンザスなどその他地域よりも10ドルほど安い。

上のOur Finite World氏が引用している記事によれば、クシンからメキシコ湾岸までの輸送コストはトラックで10ドル/バレル、鉄道で6ドル/バレルらしい。クシンからノースダコタまではこの倍の距離がある。WTIに対するノースダコタ油のディスカウント16ドルは輸送コストに見合った水準なんだろう。

足下では原油価格が下落している。更に下落した場合には、ノースダコタのシェール・オイル(そしてカナダのオイル・サンド)はもともと採掘コストが高いだろうし、加えて輸送コスト高による売値のディスカウントから採算性が急速に厳しくなるだろう。たぶん、テキサスなどのストリップ・ウェルズよりも採算性が厳しいため、ノースダコタから生産が落ち込み始める。そして、PADD2での原油ダブつきが緩和され、WTIとブレントのスプレッドが若干縮小する。。。といっても、過去の原油価格と生産動向からは、WTIが80ドル以下になって初めて起きることだろうが。

シェール・オイルに関する参考記事。
Our Finite World: Is “shale oil” the answer to “peak oil”?
Business Watch: Adding value to oil: Refining the state’s energy industry

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年初来の原油価格の変動にもかかわらず、WTIとブレントのスプレッドは10-15ドルで維持されている。『スプレッドを決めているのは、クシンとメキシコ湾岸までの輸送コストであり、マージン込みで考えて10-15ドル/バレルが適正なスプレッドだろう』というDennis Gartman氏の見解(上の引用と同じ)は正しかった。

他の要因もWTI-ブレントのスプレッドに影響を与える。米政府の承認待ちであるKeyStoneパイプラインの増設(KeyStone XL)はエドモントンからノースダコタ、クシンを通ってメキシコ湾岸を直接結ぶ計画だが、これが順調に承認されるとしても、KeyStone XLの稼働は2013年と見込まれている。それまでスプレッドは解消しないというのが一般的な見方だろう。

また、メキシコ湾岸からパトカに原油を送っているConocoPhillipsのCapline Pipelineが逆送されて中西部からの輸送ルートが確保されれば、同様にスプレッドは解消に向かうだろうが、ConocoPhillipsは逆送させる予定はないそうだ。

この他、オイル・シェールの採掘に関する環境規制が強化されればオイル・シェールの採掘コストを引き上げるためスプレッド縮小要因となるが、一方、KeyStone XLに関する環境規制が強化されると、中西部における原油ダブつきが続くため、スプレッドが維持される要因となる。

・・・というふうに、原油に関しては米中西部(PADD2)における市場の分断が価格差を生み出し、そのスプレッドは中西部から世界市場(メキシコ湾岸)への輸送コストによって決まっている、ようなんですが、これと同じような構図はガスにおいても生じていると思うのです。

# by guranobi | 2011-05-18 01:13 | energy
2011年 05月 17日

今更、原油とガスの欧米価格差について①

まったくもって今更ですがw、自分なりに理解しときたかったので。

最初に、価格差の動向から。

原油・・・WTI(US)とブレント(UK)のスプレッド(ともに1ヶ月先物)。期間は過去5年。
過去にもWTIとブレントのスプレッドが拡大したことはあるけど(07年5月など)、今回はそのスプレッドの大きさもさることながら、スプレッド拡大の期間が長期化していることに特徴があり、投機マネーや先物のロール・コストといった金融面の要因ではなく、構造的な変化が起きたことが背景にありそう。シルバー・ショック後もスプレッドは縮小していないし。
Bloomberg: 1st Month WTI Brent Spread
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次に、ブレントとドバイのスプレッド。同様に、期間5年。
恐らくはガソリンなどの軽質油・液体燃料の需要増加とリビア政変を反映して、2011年に入ってからブレントの価格はドバイに対して上昇しているが、せいぜい3-4ドル程度の上昇でしかなく、過去5年の水準と比較しても例外的に高いというわけじゃない。つまり、WTIとブレントの価格差の拡大は主にWTIの相対価格の下落によるものだと思われる。
今更、原油とガスの欧米価格差について①_b0165963_2234633.jpg


ガス・・・NBP(UK)とHenry Hub(US)のスプレッド。原油とは逆に欧州 - 米国なのに注意。こちらの期間はデータの制約から、1年。
INO.com: NBP Henry Hub basis swap, Jun 2011
今更、原油とガスの欧米価格差について①_b0165963_11162033.jpg

ガスが過去1年を通じて欧米間スプレッドが拡大していたのに対して、原油は今年に入って急速にスプレッドが拡大しています。

そもそも2-3年前までは、『カタールのLNG輸出が本格化し、ガスの取引市場が世界的に拡大するとともにガス価格が収斂し、原油のような一物一価が実現するのだ』と考えられていたはず。
だけど、今おきているのはガスの欧米間価格差の拡大。そして原油価格の欧米間スプレッドまでが拡大している。

convergence (収斂)のはずが、divergence (格差拡大)が起きている、という不思議。しかも、高度に統合されていると見做されていた原油市場までがdivergenceしている。

なぜ?

ど素人なりの結論は、原油・ガスともに、①市場の分断と②米国における生産急増(シェール革命)③欧州における資源枯渇、によるものだというものです。そして④スプレッドを決めるのは裁定コスト(輸送コスト)である、ということも似ている。
規模は全く違いますが。

# by guranobi | 2011-05-17 00:26 | energy
2011年 04月 20日

J-REITの長期投資・・・③

今度は、各ファンドの個別物件のIRRを見たもの。メンドいので、ビルファンド、JRE、野村不動産オフィスのみ。
取得時の不動産価格の高低によって個別物件のIRRは大きく変わります。よって時系列で並べたほうがフェアで分かりやすいでしょう。ビルファンドはH18年ころまでの投資物件は比較的安定したリターンを上げていますが、ここ数年は著しく低い運用成績となっています。対照的にJREは特別に高いわけではありませんが安定した運用成績を維持しています。直近の大型物件である汐留ビルディングは賃料収入から判断するとこれでも保守的な価格評価を行なっているとさえ思えます。

対して野村不動産オフィスは、、、ひどいですねw
前掲の個別物件IRRの低さは、なにか特別な物件によるものではなく、「平均して」物件のIRRが低いのです。時期や物件の大小も関係なく。このグラフではIRRが▲70%となったため除外したNOF名古屋伏見ビル(購入直後の決算でほぼ半値の評価w)が注目を集めていますが、これだけではなく、物件取得時の想定NOIが実績と比較すると高い傾向にあるように思えます。てか、実績が想定を上回っている物件が非常に少ないし。証券取引等監視委員会が注目していてもおかしくないレベルw
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あと、物件評価の際の利回りの推移。DC法の直接還元利回り、単純平均。Aクラスビルの期待利回りと比較すると、評価の際の利回りはまだ十分に上昇していないんじゃないかと思うんですよね。特に、良質のオフィス系は。
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この点、不動産価格の上昇余地が(原発問題を別にしても)あまり大きくはない可能性を示唆しているし、最初に見たグラフの、水色の囲み、すなわち賃料上昇&投資口価格の上昇期に移行したとしてもその上昇余地はあまりなさそうだ、と思えるのです。
まぁ、よくわかんないんですがw

# by guranobi | 2011-04-20 23:23 | REIT
2011年 04月 20日

J-REITの長期投資・・・②

次にお示しするのは、出資金のリターンと、J-REITの投資口のトータル・リターンの比較です。

ややこしいのですが、出資金のリターンとはJ-REITの投資成績であり、出資総額、分配金総額、保有資産の時価などによるIRRで計算しました。一方、J-REITの投資口のトータル・リターンとは、投資口の価格変化に分配金利回りを加えたトータル・リターンです。株式で言えば、企業の事業成績と株価のリターンを比較したようなものでしょうか。

縦軸(y軸)が出資金のリターンであり、Fund IRRとしています。横軸(x軸)が投資口のトータル・リターンです。バブルの大きさは時価総額、水色はオフィス系(複合系を含む)、赤色はレジデンシャル、紫はリテール、灰色はインフラ系です。ホテルなどは除外。合併などによりリターンが極端に大きい銘柄(ビ・ライフなど)も除外してます。

データの更新が面倒だったのでw、トータル・リターンの計算は04年からにしています。まぁ、それでも両者の相関性はまずまず高い。そして、出資金のリターンのうち、分配金利回り(3段目のグラフ)=インカムよりも保有不動産の含み益(2段目)=キャピタルの運用成績こそが長期的にはJ-REITの投資口のリターンを左右するのではないかと思います。
この点、前掲の住信のレポートがJ-REITのリスク決定要因として不動産市場の影響の大きさを指摘していることと符合します。
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ちなみに、水色のオフィス系のみで見た相関性。結構高いですね。このことから、J-REITのセクター・セレクションが重要であることと、同一セクター内ではより良い物件選択を行うファンドに投資すべきであることがわかります。まー、当然のことなんですがw
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更に、出資金のリターン(Fund IRR)と、個別物件のIRRの平均を比較したグラフ。
J-REITの運用成績を左右するのは主に物件選択だということじゃないでしょうか。もちろん、LTVの水準や借入金利などの財務戦略、あるいは運用報酬の水準なども重要なんでしょうけど、何よりも物件の運用成績こそがJ-REITの運用成績、ひいては投資口価格の長期的な動向を決めるんだと思います。

また、出資金のリターン(Fund IRR)が概ねポート資産のIRR平均を上回っている(傾向線の傾きが1よりも大きい)のは借入金等によるレバレッジ効果によるものであり、傾きが1よりも低いファンドは財務戦略に難あり、あるいはファンドサイズが小さすぎて規模の経済を働かせられていない、ということかと。右下の方に小さなバブルが集まっているのは、合併や増資などのサイズ拡大による効率性向上の余地があるということだと思います。
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個別物件のIRRは、取得価格(追加取得を含む)、NOI(不動産運用損益+減価償却費)から資本的支出を控除したNCF、売却価格(売却関連費用控除後)、保有時価などによって求めています。
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# by guranobi | 2011-04-20 22:21 | REIT