2011年 07月 07日

債券利回りと株価の相関性、そしてQEの波及経路

お久しぶりです。ネタがなくて困るのですが。。。

6月は米国10年債利回りが3%を下回る状況が暫く続きましたが、その間、軽く恐怖心を覚えました。
ISMやらADPやら強めの数字が出て、やはりソフトパッチは統計上の歪みだったかとほっとしてますが、長期金利がジワジワと下がっていく状況はイヤなものです。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

このグラフの赤色の面グラフは、米国の10年債利回りの変化(前日差, %p)と株価のリターン(前日比, %)の相関性。100営業日ローリング。青線は10年債利回り。

現在の債券利回りと株価の相関性は正なので、金利低下=株価下落ですね。
ところが、67-97年頃の間は両者の相関性は負でした。金利低下=株価上昇。
そして67年以前では相関性は正です。

b0165963_1103261.jpg


この債券利回りと株価の相関性の逆転は、何が原因なんでしょうか?
よくわからんのですが、インフレの水準じゃないかと思うんですよね。

単純な株価モデルのDDMで考えると、
株価=配当/(割引率-配当成長率)
P=D/(r-g)

ここで、配当≒企業収益の成長率gはインフレ率が高すぎても低すぎても低下するんじゃないかと思うんです。

次のグラフは、米国の企業収益(NIPAベース)とGDPデフレーターの3年平均の関係。
両者には相関性は認められません。で、紫色の台形のように分布しているように思うんです。あくまで僕のイメージですが。
b0165963_0203978.jpg

これに10年債利回りを赤色で重ねたもの。右側の高インフレの時には、割引率r(10年債利回り)が高止まりする一方で、企業収益の伸びgは鈍化する。よって、金利の上昇は株価下落に繋がる。
逆にグラフの左側、低インフレの時には金利の低下は割引率rの低下として株価にはプラスだが、それ以上に企業収益の伸びgの落ち込みが大きく、株価下落となる。よって金利と株価は正の相関となる。
たぶん、過去20年間の日本はこの台形の左下のところに留まり続けていたんじゃないかと。
b0165963_0231198.jpg


参考までに、日本の金利と株価の関係。データの制約からこちらは月次。米国の相関性が98年ころにプラスに転じたのに対して、日本の相関性はデフレに陥った93-94年からプラスになってます。
金利と株価の相関性の逆転がグローバルに同時に起きたわけではなく、先行してデフレ局面に陥った日本において、やはり相関性の逆転が先行しているということです。
b0165963_0275546.jpg


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

現在の債券利回りと株価の正の相関を考慮するとですね、QEの波及経路として言うところのポートフォリオ・リバランス効果とやらに疑問を感じるわけですよ。FEDが米国債を購入して米債の価格を押し上げ、それが他資産に波及する、とは考えがたい。
それよりも、FEDの米債購入によってインフレ期待ないしは成長期待を押し上げ、米国債価格を押し下げ=金利上昇を引き起こして、米債から他資産に資金が流出することによって株式などの資産価格効果が発生すると考えるほうがしっくり来るんですよね。

だから、QEが成果を上げるシナリオは金利上昇であって、金利低下ではない

PIMCOは、「米債金利は上昇する。そして、8月にもQE3が行われる」とか言っているみたいですが、金利が上昇するならばQE3は必要ないし、QE3が行われる状況では10年債利回りは2%台前半くらいまで低下しているでしょう。

まー、未熟者の解釈なのですけど。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

そうそう、金利と株価の関係については日銀が興味深い分析を出していますね。
BOJ:低金利持続期待の変化と株価

低金利が持続するという期待が強まった局面では、株価の下落に繋がりやすい。しかし、政策当局の積極的緩和姿勢を背景とした低金利持続期待の局面では、株価が上昇している。これは、政策当局者の姿勢が金融市場に大きな影響を与えるだろうことを示唆しているのではないでしょうか。

だからこそ、今のFEDメンバーが出口戦略を詳細に検討するような”前のめり”の姿勢がイヤに思える。出口戦略の方法を議論するのではなく、出口戦略が必要となる環境、条件を検討するほうがよっぽど市場の安心感に繋がるでしょう。

それにしても、この日銀のレポート、白川批判と捉えられないんでしょうかね?w
[PR]

# by guranobi | 2011-07-07 00:14 | 米国
2011年 06月 14日

記事の紹介のみ: 欧州の金融政策について

先の記事で度々引用したResearch Ahead氏はドレスナー・クラインオートのエコノミストでマクロ・ストラテジストだったらしく、欧州の分析が本職らしい。

2011.1.28: Monetary developments in the Eurozone will soon call for higher rates
2011.2.2: A higher ECB repo rate by June
2011.4.5: No ECB policy mistake
2011.4.9: More ECB rate hikes needed

ECBの利上げについて早くから予想していたと氏は述べているが、そう考えた理由は、

・ソブリン危機諸国の長期金利は、危機以降、短期金利(EONIA先物)との相関性が低下しており、ECBの利上げが危機諸国の長期金利を引き上げるとは限らない。それよりも、これら諸国の財政政策などの債務軽減策のほうが長期金利にとっては重要。

・また、ギリシャ、アイルランドは事前に定められた金利によってIMF/EU/EFSFから借入を行うため、長期金利の上昇は債務返済、資金調達に実質的な影響を与えない。

・脆弱な銀行にとっては、資金調達の量が重要な問題であり、調達金利の水準は2次的な問題である。

一方で、
・量的緩和によって変動幅が大きくなっているM1やM3の増加率そのものを見るべきでなく、M3とM1の増加率の差を見るべき。M3-M1によれば、民間の資金需要が高まっていることとECBの利上げを示唆している。

・欧州の銀行の資金調達の容易性は高まり、貸出基準の急速な緩和が見られる。

・北欧、東欧では物価上昇が進んでおり、金融引き締めへの転換が必要。

・・・といったもの。氏は欧州の金融システムの脆弱性は認めており、量的緩和を維持したまま金利引き上げに進むだろうと予想し、的中させた。そして更なる利上げを予想している。


どういったかたなのか知りませんが、欧州のみならず氏の分析は首肯する部分が多い。
今後もフォローすべきかな。
[PR]

# by guranobi | 2011-06-14 00:27 | 欧州
2011年 06月 13日

米国の家計所得の予想、、、あくまでイメージで

先程の記事の続きを若干。

仮に貯蓄率の低下トレンドが続くとしても、所得の伸びが過去の景気回復期と比較して異例に低い状況が続くんじゃないかと僕は考えています。その主因は時間あたり賃金の上昇率の鈍化です(下図の濃い紫色の部分)。
なので、個人消費の伸びはFEDが想定しているであろう水準よりもかなり低くなるんじゃないかと思ふ。
b0165963_22222064.jpg


米共和党が財政削減にこだわり続けるならば、更に所得・消費環境が悪化するのは必死。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

余談ですが、先の記事でも引用したresearch ahead氏の最近の記事は興味深い。今春の米国経済データの落ち込み(ソフトパッチ)は季節調整の”歪み”によるものだという指摘。今回の景気後退があまりに大幅な落ち込みだったため、統計上の歪みが生じているとの見解。
ご参考まで。

research ahead: Growing probability of positive US data surprises

ちなみに、、、前月比+5.4万人となった5月の雇用統計ですが、4-6月の労働投入量は前期比年率+3%強とかなり高めになる計算。6月の雇用統計でどーなるかはわからんがw
市場のネガティブな反応とは違って、強めのGDPなどが出て、短期的に金利はスパイクするかもな~というのが今の僕のイメージ。
[PR]

# by guranobi | 2011-06-13 22:20 | 米国
2011年 06月 13日

米国の貯蓄率は低下トレンド入り

米国の貯蓄率は過去1年の間、1%pほど低下して4月は4.9%となりました。そして中期的には、このまま低下トレンドを続けて14年末では3.0%程度、あるいは3%以下まで下がるんじゃないかと思います。

高齢化や生産性などの影響も考えてみたんですが、これらの要因についてはどうもよくわからん。。。後でグラフだけ付け加えます。

今回、貯蓄率の低下を予想する理由は、債務返済負担の低下です。今更ですが。。。
ストック面の分析が甘いのは、僕だったかもしれません。
b0165963_0351623.jpg


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

ふつう、貯蓄率は以下のように計算します。

貯蓄 = 可処分所得 - 消費支出
貯蓄率 = 貯蓄 / 可処分所得

所得のうち消費したものの残りが貯蓄。「1 - 貯蓄率」は消費性向です。貯蓄率の低下は消費性向の上昇であり、一般的には消費意欲の高まりだと解釈されます。

しかし、消費するためのカネは所得だけではありませんね。「借金」で得たカネも使う。あるいは、「借金」の返済を優先して消費を抑制することもある。今の米国のように。

・・・ということを考慮して、貯蓄率の計算の可処分所得に「借金の増減分」を加えて修正してみました。消費に使うカネが、所得と借金の両方から出てくると考える。念のためですが、フツーの貯蓄率が不適切というわけじゃなく、借金を加えて修正したものも合わせて趨勢を把握するほうがいいんじゃないか、ということです。

その修正貯蓄率が下の赤色の破線。所得に加える「借金」は消費者信用とホームエクイティローン(HEL)です。モーゲージ(住宅ローン)を加えていないのは、住宅ローンの大部分は消費じゃなくて住宅購入に回されるため。まぁ、米国では少なくない部分が消費に回されるようですが、HELで代用できますし、あまり深く考えない方向でw

第二次大戦後から2000年代まで趨勢的に修正貯蓄率は実際の貯蓄率を上回っています。そして、2000年代では実際の貯蓄率が急低下したのに対して、修正貯蓄率は比較的安定している。リーマンショック後は、実際の貯蓄率が急上昇している。これは金融が急速に収縮したので、借金返済に優先的にカネを使わざるを得なくなったため、と考えていいでしょう。
b0165963_17432694.jpg


そこで、まず、FOFの記事でも見た家計の債務負担の調整について仮定を置きました。消費者信用は11年末~12年前半にボトム、HELは13年末~14年にボトムを付けると想定。薄い色の部分が想定値です。やや楽観的かもしれませんが、大筋を考えるための仮定値ですから、お見逃しを。
b0165963_20235856.jpg


これに、雇用・労働時間・時間あたり賃金の想定値をベースとした可処分所得から、実際の貯蓄率の推移を計算するとこんな感じ。ベースとなる”修正貯蓄率”は4.5%で横ばいにしました。とりあえずの仮定値として。
今回の試算では、11年内は4.9-5.2%程度で横ばいとなり、12半ばから本格的に低下しはじめ、13年末に4.2%、14年末 3.4%、15年末3.2%
b0165963_2101830.jpg


ここで重要なことは、債務が減っている過程であっても、債務の減少額が小さくなれば(債務負担が小さくなれば)、貯蓄率の低下要因になるということ。これは過去1年の貯蓄率低下の主因でもありますし、今後も中期的に続くだろうと思います。
上の貯蓄率の試算値では11年内から12年半ばまでは横ばいとなっていますが、それは試算のなかでのブレのようなものです。11年内に貯蓄率の低下が続いたとしてもおかしくはありません。
b0165963_21182268.jpg


・・・以上のような点も、FEDメンバーが年後半の消費ピックアップを想定している理由なのかな~?
もしそうなら、「ストック面の分析が甘い気がする」とか書いてゴメンね、バーナンキ。だけど、そういった説明を見たことないんだよな~

それと、貯蓄率の低下が中期的に続くとしても、消費が加速するとは限らない。高失業率を背景とした時間あたり賃金の上昇率の鈍化が続くのならば、所得の伸びは暫くは低いだろうから。この点、簡単な記事を書くかもです。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

以下、余談のようなもの。

貯蓄率の長期的な推移と年齢構成を比較してみると、人口動態の変化は必ずしも貯蓄率の動向を決めているとは言いがたい。
下の1段目のグラフは15歳以上人口に占める中・高年齢の比率と、貯蓄率の推移。5歳階層別。2段目は全米の平均年齢の推移。
80年代以降、米国の高齢化と貯蓄率の低下が概ねパラレルに起きているように見える。しかし、30年代から70年代までは高齢化とは逆に貯蓄率は上昇している。
また、3段目のグラフは貯蓄性向が高いとされる30-55歳の人口比率と貯蓄率の比較。パラレルに見えますが、30-55歳の構成比は逆メモリなので、、、想定とは反対の動きなのです。
b0165963_1117419.jpg


また、米国の貯蓄率について考察を加えているこちらの記事を参考に全要素生産性(TFP)と貯蓄率についても考えた。生産性上昇率の加速が投資機会を拡大し、実質金利と貯蓄率の上昇に繋がる、という氏の指摘は興味深い。

research ahead: Demographics, the savings ratio and interest rates

過去の動向を見ると、生産性(ここではMFP)の鈍化が70年代前半に生じ、それが80年代後半からの貯蓄率の低下を生んだように見える。もっと深く考えたかったんだが、、、時間切れ。
b0165963_21413580.jpg


まぁ、人口動態や生産性の状況も、どっちかというと今後の貯蓄率のトレンドの低下を示唆しているように思える。なので、上の試算値はさらに低めに考えておきたいのです。
[PR]

# by guranobi | 2011-06-13 00:38 | 米国
2011年 06月 12日

米国 Flow of Funds, 11年1Q

米国のFlow of Funds(資金循環統計)が出ましたね。
どこぞのレポートでも紹介されているでしょうから、ごくごく簡単に。

FED: Flow of Funds Accounts of the U.S.

ホームエクイティローン(HEL)の可処分所得比の推移。HELは依然として安定的に減少しており、13-14年頃が調整の目安。
貯蓄率との関係については、別途、記事を書くと思います。たぶん。
b0165963_091438.jpg

住宅価格(Case shiller)と、1世帯あたりのHEL残高を比較しても、やはり13年ころが調整終了の目安に。
b0165963_0124074.jpg


米国債保有の増加は当然ながらFEDが主役に。注目は家計が米国債の大幅な売り手となったこと。何かテクニカルな理由があるのかもしれないが、質への逃避の終焉と見るべきところ。
b0165963_0151150.jpg


家計は米国債の代わりに、MBSとエージェンシー債に回帰してきている。FEDはMBSの元本償還を国債に再投資しているため、MBSの保有残高は緩やかに減り続けている。暫くすれば(1-2四半期後?)海外勢もMBSに本格的に帰ってくるんじゃないか?ドル高とともに?
b0165963_0192887.jpg


ちなみに、FEDの資産構成の推移。
b0165963_031396.jpg

FED: Monthly Report on Credit and Liquidity Programs and the Balance Sheet

モーゲージ債権の保有者。ABSの腐臭は半分ほど消えたところか?商業銀行はモーゲージ圧縮を継続。
b0165963_0241438.jpg


消費者信用の注目点は、学生ローンの増加。若年層の労働参加率の低下を金融面で支えている。なんか、政府プログラムが貢献しているんだろうな。わかんないけど。
b0165963_0273555.jpg

[PR]

# by guranobi | 2011-06-12 18:16 | 米国
2011年 06月 02日

FOMCに見る福井日銀のデジャヴ

最初にお断りしますが、グチです。毒吐きますので。

前回の記事の続きです。4月のFOMC議事録を読んだ時に福井が浮かんできたんですよ。殺人集団日銀の前総裁、福井。

不適切な金融政策がどのような悲劇をもたらすかは、われわれ日本人ならよく知っているでしょう。特に、投資をなす人々は。

2007年2月に福井日銀が2回目の利上げに踏み切る前、僕はブログ上で半狂乱でした。賃金(所定内給与)が下落しているなかでの追加利上げは、狂気の沙汰としか思えなかったのです。賃金が下落しているということは、完全雇用が達成されていない、あるいは失業率が自然失業率を上回っているということ。つまり、GDPギャップが依然として存在していた。
しかも、物価は下落ないしはゼロだった。コアコアはもちろん下落していたし、生鮮食料品を除く総合はせいぜい+0.5%。誤差の範囲だし、インフレ・バイアスを考えればゼロ以下。物価が急騰しているってんならね~、実質金利を調整するための利上げもわからなくもないんだが、、、当時は利上げすべき理由は全くありませんでした。
福井の妄想を除いては。

当時は、「いざという時の利下げに備えて、弾丸を装填しているんだ」とか、呑気なことを言ってた人もいたけれど。そういう方々や、(利上げに反対した)岩田委員以外の日銀審議委員が経済と金融政策を理解していないことは、今となっては明らかなことだと僕は思っています。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

恐らく、現在、多くの方々が菅直人に対して抱いているような嫌悪感を、当時の僕は福井俊彦に対して抱いていたのです。そして今の僕も。

責任ある地位にありながらその責任に相応しい知見も理解力もなく、ただ饒舌に意味不明な言葉を吐き、愚かな行動で多くの人々を不幸にする。宰相不幸社会、いいですねw

そして、自らの過ちを決して認めることがなく、それが故に、誤った政策を続ける。リーマンショックが襲ってきたにも係わらず、福井は結局、退任するまで利下げをせず、アクシデンタルに後任となった白川も利下げしたのは主要先進国では最後でした。
無謬性に拘る輩は、悲劇を拡大する。原発だけじゃないんですよね。

専門家と見做される人々が決してそれに相応しい能力を持っているとは限らないし、日本の場合には組織の意向に沿った”専門家”は得てして無能であり、有害ですらある。原発対応の稚拙さは、日銀の無能さと重なって見える。なんかね、デジャヴなんです。

FOMC議事録で早々に出口戦略を議論するメンバーには、福井と似た臭いを感じる。
大幅なGDPギャップが存在していることは明らかだし、第3次産業が経済の主体であるなかでは賃金動向やULCに注意を払わなければならない。そして、株価や、特に住宅価格の上昇を忍耐強く甘受しなければならない。賃金が鈍化し、住宅価格が下落を続ける中で出口戦略を検討するなんてのは、早過ぎる。

まそれでも、物価がゼロどころかデフレのなかで資産価格を殺しにいった福井の無能さと較べればはるかにマシではありますが。

唯一の救いは、バーナンキには”過ちを認める能力”があることです。リーマンショックの時も状況把握に時間はかかったけれど修正したし、10年初頭のMBS購入停止の失敗もQE2で修正した。フリードマンに対しても、FEDを代表して大恐慌時の対応の過ちを認めた。

だから、深刻な事態にはならないとは思う。けどね、注意しなきゃいけないと思うのですよ。米国の低金利こそが、株高、商品高、エマージングのインフレ懸念の主因でしょうから。
FEDが利上げしちゃったら全ての景色が変わるはず。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

ちなみに、Case Shiller指数を時間あたり賃金で実質化したグラフ。

だいぶ下がりましたね。南東部や中西部といった内陸部では90年代を下回るほどにまで低下しています。NYやCAなどの東西両岸は90~2000年ころの水準を2割ほど上回る水準にとどまっています。ただ、これら両岸地域にはドル安や不動産安を理由に海外投資家の資金が流入しているとも指摘されています。
低金利も長期化しているし、そろそろ反転上昇してもおかしくないぞ、と。
b0165963_14161469.jpg


そしてFEDも注目していると評判の?CoreLogicのHome Price Index
CoreLogic HPI
・・・を紹介しているCRの記事
CoreLogic: Home Price Index increased 0.7% between March and April

HPIは季調前のデータであり、季調前の住宅価格は通常6月から上昇を始めるにもかかわらず、4月のHPIが+0.4%上昇しているとCRは指摘している。
HPIについて同様に興味深いのは、distressed sales除きの価格が前年比で上昇しはじめていること。これもね、利上げの理由にされかねないんですよね。
b0165963_22421897.jpg

b0165963_22423237.jpg

[PR]

# by guranobi | 2011-06-02 21:11 | 米国
2011年 05月 30日

米国の雇用・物価見通しのアップデート

ちょうど半年前に米国の雇用・物価動向の見通しを作成しました。今回はそのアップデートで。
本来なら2月くらいに行うべきだったのでしょうけど。

米国の中期経済見通し? 雇用・物価動向

その見通しの結果は、、、外しました。見事に。
金利は「デフレ・リスクが高まる展開なので、実質金利は比較的安定する一方で、BEIの低下が特に短-中期セクターにおいて見られると思料。よって、再びブル・スティープの展開を予想」と書きました。しかし、この半年間の展開はせいぜいレンジ相場。足下は金利が低下しているけれど、これはデフレ懸念というよりも景気の失速懸念によるもの。

また、GDP+3.25%成長を前提として、失業率は11年末で9.6%と予想したけど、既に9.0%にまで低下。GDP成長率が想定よりも低かったのですが、成長率の下ブレは失業率の上ブレ要因ですから、実際には1%ほど失業率の予想水準は違っていた。この見込み違いの主因は労働参加率=労働供給が予想以上に急低下したため。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

労働参加率については前回の見通しでも十分に検討したつもりだったけど、それでも甘かった。
米国の景気回復の初期においては、失業率が低下しはじめた数カ月は労働参加率も低下する(下図の青色の囲みの時期)。今回は景気後退が深刻であったことから労働参加率は2011年も緩やかな低下を続けるだろうと考えていたが、12-1月の低下は予想以上だった。
b0165963_0133425.jpg

興味深いのは、労働参加率のトレンドは全くといっていいほど変わっていないこと。つまり、若年層・中年層の労働参加率が低下し、高年齢層の参加率は上昇を続けている。12-1月の低下を含めて、今回の景気後退および景気回復初期では、このトレンドが加速したに過ぎない。
b0165963_0542666.jpg

下図は青色が進学率(Enrollment rate, 逆メモリ)で、赤色が労働参加率。年齢階層別。
前回の検討でも指摘したが、米国では高等教育への進学率が80年代後半から上昇するとともに、若年層の労働参加率が趨勢的に低下している。景気後退期に進学率は上昇するが、それは就職先を見つけるのが難しいための労働市場からの”退避”という側面だけではないだろう。趨勢的な進学率上昇が景気後退を機に加速しているとも言える。
b0165963_10872.jpg

まー、イロイロ考えてみて、労働参加率の見通しを修正。外した分だけ、単に引き下げたわけですが。
b0165963_122632.jpg


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

そして、新しい労働参加率のもとでの予想はこんな感じ。ULCは前回の15年に▲1.3%という”過激”な見通しではなく、13-14年に▲0.1%程度という緩やかなディスインフレ・シナリオに修正。
b0165963_185436.jpg

ただ、これでも現在の一般的な物価見通しよりもかなり下に見たものだろう。実際に、コアCPIのみならずクリーブランド連銀の刈り込み平均などを見ても物価はボトムアウトしたように見える。
b0165963_1154631.jpg

しかし、失業率と賃金上昇率の”加速度(前年比上昇率の前年差)”の関係は変わっていない。失業率6%を大きく上回る状況では賃金上昇率は着実に鈍化している。大幅なGDPギャップが存在するために、デフレ圧力が継続している。こういう構造的な背景があると考えなければ、足下の金利低下は理解しがたい動きだろう。
b0165963_1183745.jpg

なので、Fedは11年内はもちろんのこと、12年も利上げするべきではない。

だが、、、ご存知のとおり4月FOMCの議事録で出口戦略を詳細に検討していることから、早過ぎる利上げにFEDが傾くリスクは高い。
「今回は結論を出さずに、出口戦略の検討のみを行った」というFOMCが1年以上続くと考えるのは難しい。議論するばかりじゃないはずなんだよな・・・

これまでも度々グチってきましたが、バーナンキは過剰債務問題とかのストック面の分析が甘い気がするし、FOMC内の合議制という名のリーダーシップの不足も気になる。タカ派に押し切られるリスクはリアルだ。

FEDのBSとか、FOMCの議論の傾向とか、まめまめに検討しなきゃいかんのだろうな~
もうちょっと米国についてはゆっくりできると思っていたんだけど。。。
[PR]

# by guranobi | 2011-05-30 00:51 | 米国
2011年 05月 29日

省エネの果実を摘み取るのは産油国③

最後に、グラフを幾つか。
韓国はエネルギー消費が第2次オイルショック期と同等のGDP比10%にまで上昇している。また、ガスへの依存度を高めていることがわかる。中国は、オイルショック時はGDPが少なかったし、原油は自国生産だったので比較にならんですね。現在のGDP比はやはり10%。ブラジルはエマージングのなかではかなりの優等生。
b0165963_1174884.jpg

産油国は軒並み、とんでもなくエネルギーを浪費している。財政支援によって国内の小売価格を抑えているんですよね。消費国の省エネの果実は産油国の人々の浪費に転じているという構図。中東のみならず、エクアドル(15%)やエジプト(13%)も高い。
b0165963_1201516.jpg

欧州の債務危機の国々はエネルギー消費の面でも問題児。欧州の先進国としては高い水準です。ギリシャなんかは、ユーロ離脱→ドラクマ暴落となったら、大変だろうな~
b0165963_124942.jpg

[PR]

# by guranobi | 2011-05-29 01:26 | energy
2011年 05月 29日

省エネの果実を摘み取るのは産油国②

ところで、この”原油消費/GDP比による上限”という考えは1つの示唆を含みます。それは、この”上限”価格が成立するならば、「日本を含む消費国が省エネに努めエネルギー効率を改善しても、その果実は生産国に吸い取られる」ということを意味するからです。

一般的に、1国のエネルギー効率の改善の程度はエネルギー原単位によって示されます。

エネルギー原単位=1次エネルギー消費量 / 実質GDP

例えば、われわれ日本人は1人あたり1日に10万kcalの1次エネルギーを消費しています。人間の1日の摂取カロリーのだいたい50倍ですね。ちなみに、明治20年ころのエネルギー消費は1人1日あたり4000kcalです。
そして、1円のGDP(2000年価格、実質)を生産するのに投じている1次エネルギーは9.5cal。これは、第1次オイルショック時のおよそ6割の水準です。1人あたりの1次エネルギー消費、そして実質GDPは趨勢的には上昇していますが、エネルギー原単位はオイルショックを機に低下し続けています(ソース)。
b0165963_20312425.jpg

つまり、日本経済は省エネに勤しむことでより低いエネルギーしか必要としないはず。ところが、、、
日本のエネルギー消費のGDPに対する割合は第1次オイルショックのときと同程度の4%。
b0165963_20553017.jpg

4割も省エネしたはずなのに、原油価格が実質ベースで8割上昇しているため、結局は(名目)GDPに対するエネルギー支出の割合は変わっていない。
b0165963_2329186.jpg

これは単純な話で、

エネルギー消費額 / 名目GDP = (エネルギー消費量 / 実質GDP)*(エネルギー価格 / GDPデフレーター)

と分けて考えれば、右辺の第1項はすなわちエネルギー原単位、第2項はエネルギーの実質価格ですね。省エネに勤しんでエネルギー原単位を引き下げても、エネルギーの実質価格が上昇すれば、その効果は相殺される。省エネの効果はエネルギー価格の上昇を通じて産油国に移転してしまう。

そこで、エネルギー価格が最初に触れた”上限”価格にまで上昇するのならば、あるいは、OPECがこの”上限”を目安に原油価格を維持するのならば、どれだけ省エネに努めてもそれは無駄な努力に終わるのではないでしょうか。

ここに、日本が再生可能エネルギーに転換していくべき、真の国益上の理由があるんじゃないかと思うんですよね。CO2なんかは関係なく。
少なくとも、脱”石油”を目指すべきなんではないかと。OPEC/サウジに価格決定権が握られている原油に依存するのは、国益を損なうリスクが高いと思うんですよ。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

ところで、、、話がコロコロ変わって恐縮ですが、前に触れた”原油消費/GDP比による上限”というのはちと高すぎますね。特に米国の事情を考慮するとこの上限価格はたぶん、高すぎる。というのは一般消費者にとって最も身近なガソリン価格は、原油とは違った動きをしているからです。

次のグラフは、上段が米国における原油、天然ガス(Henry Hub)、そしてガソリンの実質価格です。1922-72年の平均を10とした指数で、対数表示になってます。
原油と天然ガスは実質価格で見ても、オイルショックを機に価格水準が切り上がっている。しかし、ガソリンの実質価格は2000年代半ばまでほとんど変わっていない。90年代までは下落すらしている。

この原油とガソリンの価格を比較したものが下段のグラフです。ドル/バレルで、こちらは名目。灰色の面グラフはガソリン価格に占める原油の価格です。
オイルショックを境に、原油/ガソリンの相対価格が急上昇している。つまり、原油価格の上昇を石油精製段階での生産性向上が吸収し、ガソリン価格への転嫁を防いだ。だからこそ、ガソリンの実質価格は変わらなかった。オイルショック後、現在にいたるまで米国の製油所数は趨勢的に減少し、かつ大型化していますが、これらは石油精製、中間段階での生産性上昇を意味します。
しかし、2000年代に入って再び原油/ガソリンの相対価格は上昇し、今やガソリン価格の70%は原油です。もはや中間段階の生産性向上によって価格転嫁を防ぐ余地は乏しく、原油価格の上昇がそのままガソリン価格に転嫁されやすくなっている。更に米国は課税水準が低いためにガソリンの小売価格が日欧の半分程度なので、原油価格の転化率が高くなる。
これが、米国において特にガソリン価格高騰が顕著で消費者心理を圧迫している背景だと思う。そしてリファイナリーの倒産が囁かれている背景でもある。
b0165963_0404221.jpg


米国の小売売上高の内訳を見ると、ガソリン・ステーションの売上高は食料品店と同じ規模なんですよ。食料品販売はこれ以外にも百貨店・スーパーや通販にも含まれるので、全く同じ金額というわけじゃないけど。
日本で感じる以上に、影響が大きいだろうな~
b0165963_133657.jpg

・・・というふうに、石油精製段階での生産性向上による吸収余地がオイルショックのときよりも難しくなっているため、オイルショック時の石油消費額/名目GDPで算出された”上限”は、おそらくは高すぎる。その前に、消費者が値を上げるだろうと思うのです。

じゃ、ガソリン価格をも考慮して上限価格を算出したいことこなんですが、それは根性なしには難しかったのでした。
[PR]

# by guranobi | 2011-05-29 00:23 | energy
2011年 05月 28日

省エネの果実を摘み取るのは産油国①

芥田 知至:知られていない!原油価格高騰の謎

この本のなかで著者は、原油価格の上限の目安として、「原油消費のGDP比率がオイルショック時と同等になる価格」を提示しています。
原油価格が上昇して原油に支払う金額が膨らめば、消費国のエネルギー消費が減少したり、あるいはエネルギー転換が進むでしょう。そのため、原油価格にはある程度の上限があると考えるのは妥当です。てか、当たり前のことですね。
その上限の目安として、オイルショック時の原油消費/GDP比率を挙げているのです。

せっかくだから原油だけじゃなく、ガスと石炭の消費も加えて"上限価格"を計算してみたのですが、、、原油だけで出した数値とあまり変わらない結果になったのでしたw

2011年時点での”上限”は160-165ドル/バレル程度、12年170ドル/バレル、15年180-190ドル/バレルということに。ついでに米国、欧州(EU)のエネルギー消費に基づいた”上限”も。
b0165963_17345231.jpg


”原油消費/GDP比による上限”というのはとても興味深いものです。なぜなら、OPECの石油戦略に合致しているように僕には思えるからです。OPECの戦略が、「石油消費国を生かさず殺さず、ギリギリのところまで高い原油価格を維持する」ものだとするならば、この”原油消費/GDP比による上限”とは、すなわち消費国から搾り取れる上限を意味するように思えるのです。

僕は以前、石油価格についてというシリーズで石油価格決定の構造について稚拙な考えを示しました。すなわち、低コストのOPEC諸国、特にサウジが生産量を調整することによって、オイル・シェールやオイル・サンド、大深度などのより高コストな水準に原油価格を維持するという、寡占モデル(クールノー・モデル)による説明です。
OPEC/サウジが原油価格を操作しているのならば、その目標とする考え方に合致していると思うんですよね~
[PR]

# by guranobi | 2011-05-28 19:11 | energy