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2010年 10月 26日

Googleの実効税率

週刊isologue(第82号)Googleの節税とネット時代の国際税務(前編)

僕はisologueさんのメルマガを購読していないので中見はわかりませんが、GOOGのF/Sを見ているときにほ~と思ったことがあります。GOOGの10-Kには実効税率に関する説明がありますが、米国と外国との税率の違いによる効果が、(米国法人税35%に基づく)本来の税額の45-50%ほどもあるようなのです。
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この数値に基づいてGOOGの外国での実効税率を試算したものがこれ。09年では7.1%ということに。Bloombergの元記事の2.4%とは違いますが、いずれにせよ相当に低い。
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GOOGの節税についてはここで書いてあるように、Double Irishとか Dutch Sandwich といった手法が使われているらしい。詳しいことは分からんが、タックスヘイブンにある持ち株会社を幾重にも経由するものらしい。
Irishtimes.com: How Google dines on 'Double Irish' or 'Dutch Sandwich'

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米国のIIP (International Investment Position)に関する以前の記事で、米国の対外直接投資(FDI)の収益率が高い理由の1つとして、持ち株会社を利用した節税を指摘した。というか、単に国際通貨研究所のレポートをパクっただけだがw

国際通貨研究所:MOF委嘱「米国の対外投資分析と開発途上国及び我が国へのインプリケーション」


このレポートは実に興味深い指摘が盛りだくさんで、その1つが持ち株会社に関するもの。
米国の対外FDIの業種分類は、通常は投資先によって分類されている。そのため、”持ち株会社”という業種による対外FDIが36.5%(09年)に及んでいる。しかし、投資である親会社の業種分類で見ると様子は大きく変わってくるらしい。

このレポートのp33の表を引用させていただいて、、、
投資先の業種分類すなわち通常のFDI分類では、米国の対外FDIのうち製造業は20.7%でしかない。しかし、親会社による分類では製造業の比率は59.5%と跳ね上がる。GOOGも含まれる情報産業も2.7%から4.0%に上昇している。尤も、このデータは2004年のものなのでGOOGはまだ含まれていないか、含まれているとしても僅少でしかないが。

製造業をはじめとして多くの米国企業が持ち株会社を通じた節税を行っていることがわかる。決してGOOGだけでないし、恐らくはネット時代になる以前から行われてきたことだ。
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この親会社に因る分類のFDIデータを探したけれど2004年以降のものは見つけられず。多分、これだと思うが。

BEAにはより詳細な税制度と多国籍企業の活動を分析したペーパーがある。これによると法人税のみならず間接税も多国籍企業の行動に影響を与えているらしい。企業がより大きく、より国際化するほどに節税のための持ち株会社の利用が活発化し、その影響はR&Dや企業内取引まで幅広く及ぶ傾向にあるようだ。
BEA: Taxation and Multinational Activity: New Evidence, New Interpretations

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米国の貿易収支が巨額の赤字を計上している理由の1つは、米国企業が海外展開を進め、国内からFDIという形で海外に製造拠点を移したからでもある。日本のように輸出拠点を維持して財輸出を続けるか、それとも米国のように資本の輸出(≒FDI)を行ってより高い投資収益を追求するか、という手法、スタイルの違いが貿易収支の対照的な動向となって現れている。そして、そのウラではIIPの時価評価(キャピタルゲイン)が米国は大幅なプラス、日本は大幅なマイナスとなっている。もちろん、米国の対外FDIの収益率が高いため(そして日本がデフレで円高がつづいているため)だが、その高い収益率のどの程度が節税効果によるものなのか、そして本来の競争力によるものなのかはわからんが。

米国の輸出競争力が低下して貿易赤字を生んでいるとしても、だからといって米国製造業の競争力が低下しているわけではない。P&Gやデュポンなどの巨大な米国製造業は依然として高い競争力とプレゼンスを維持しているのではないか?

貿易収支のみならず、FDIのあり方やIIP、そしてIIPの時価評価(キャピタルゲイン)は総合的に見ていくべきもののようだ。

が、今の僕にはわからんことばかり。。。
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by guranobi | 2010-10-26 19:02 | 米国
2010年 10月 25日

中国の対外FDI(走外去)・・・④ASEANへの投資の規模

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データソースを書いてませんでしたね。ソースは商務部です。
ここらへんの年報を適当にググって。10年の月次も出ていますが、ヘナチョコなのでそこまで手が伸びませんでした。
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追加で。
ASEANへの中国の投資の相対的な規模を見てみた。

上段は、ASEANが受け入れているFDIであり、右側はASEAN内からのFDI、ASEAN外からのFDIに分けている。
ASEANが09年に受け入れたFDIは全体で396億ドルであり、一方、中国の対ASEANへのFDIは27億ドル。これは全体の6.8%に相当する。

また、ASEANが外部から受け入れたFDIは352億ドルなのでこれを分母とすれば中国の対ASEANへのFDIの比率は7.7%に相当する。
データソースはここらへん

ASEAN全体から見れば、今のところはさしたる規模ではなく、ようやく韓国を超えて日本の1/3程度でしかない。しかし、国別に観れば中国の存在感は極めて大きくなっている。ラオス、カンボジア、ミャンマーにおける中国のFDIは非常に重要な規模に達しており、人民幣の浸透と平仄を合わせた格好。
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by guranobi | 2010-10-25 06:20 | 中国
2010年 10月 25日

中国の対外FDI(走外去)・・・③

ああ、もう1つあった。
中国の対外FDI残高の、企業種類別の状況。
これ見ても明らかなように国有企業の比率が極めて高い。私営企業なんて1%です、1%w

中国の対外FDIが経済合理性に基づいていないことが推し量れる。
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あとは、、、企業別の動向ですかね。
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中国は人民幣高圧力を緩和するために対外FDIを奨励しているけれど、当然ながら人民はそれほど愚かではないということかな。さっさと自由化したほうがいいんじゃないかとマジで思える。
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by guranobi | 2010-10-25 02:53 | 中国
2010年 10月 25日

中国の対外FDI(走外去)・・・②

こんどは対外FDIを国別・産業別に見る。

最初に金額ベース。上段フロー、下段ストック。
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続いてウェイト。
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最初に言ったとおり香港への投資が2/3を占めているので全体像を把握するのは難しいが一定の傾向は伺える。
ウェイト別の中段の表はそれぞれの国/地域のなかでの産業別の比率なので、国/地域ごとの中国の投資姿勢の傾向が見える。ここで縦方向を見ると、
香港へのFDIはほぼ全体のFDIの傾向なのだが、サービス業、金融業、卸・小売業が大部分を占めている。
一方、EUや米国(美国)へのFDIは製造業への偏りが伺える。
オーストラリア(澳大利亚)への投資残高の実に86%は鉱業である。
ロシア(俄罗斯)への投資は幅広いが特色としては不動産、農林漁業、そして製造業、鉱業への偏りが伺える。公式統計でもこれだけ実物資産への投資が集中しているのだからロシアの心理的圧迫は日本の比ではないだろう。

ASEANへの投資も興味深く、電力、製造業への偏りが見える。

次に下段の表で、産業ごとに国/地域別の投資のウェイトを横方向に見る。
香港に集中しているのは、サービス業、卸・小売業、金融業、交通運輸、不動産、科学技術などであり、これらは香港から先を見なければなんともいえない。

鉱業はその他の地域に偏っているが、恐らくはアフリカだろう。
製造業、IT、建設、水利環境などは香港の他は、その他地域に偏りが見える。これは、日本、韓国と競合しない地域に先に進出しようとしているのだと思われる。たぶん、これが投資のポイントだと。

電力はASEANに集中している。

ん~、とりあえずは以上。だって、これ以上は公式資料からはわからんのです。
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by guranobi | 2010-10-25 02:45 | 中国
2010年 10月 24日

中国の対外FDI(走外去)・・・①

以前頂いた宿題に関連して、中国の対外直接投資(走外去)の動向をざっと見てみた。

・・・といっても、はっきりいってロクな結論は得られない。
その理由は、
①僕が中国語を全く理解しない
②中国の公表データがアテにならない(脱漏が多い)
③中国の対外FDIが香港、ケイマン諸島、英領バージン諸島などに集中しており、その先の動向がわからない

といったものです。なので、まぁ、テケトーな参考程度に。

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この走外去ですが、根本的な疑問が2つ。未だにわからん。

1つは、目先の人民幣高が見込まれるなか、わざわざ安い人民幣で外貨を購入する企業がどれほどあるのだろうか?
購入コストは投資収益率を大きく左右することを考慮すれば、ある程度は人民幣の上昇を待つのが企業としては当然の判断。政府がどれほど奨励しようとも、経済合理性だけでは大した投資は見込めないのではないだろうか。→逆にいうと、これまでの対外直接投資(FDI)は経済合理性以外の理由で行われてきたのではないか?

2つ目は対外FDIを行う場合には、自らに何らかの競争上の優位性があるから行うのではないか?
つまり中国企業の製品は比較的安い人件費を背景とした価格競争力にこそ優位性がある一方、一般的に品質面では未だに劣後していると思われる。そのような状況で欧米など先進国に製造拠点を持っても優位性を発揮できないだろう。
その結果、中国の対外FDIは途上国中心になるのだが、途上国中心の対外FDI(走外去)は金額面で大した規模にはならない。とすると、人民幣の上昇圧力緩和に成らないのでは?

・・・といった疑問がまず浮かんだのです。

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といった疑問はさておき、概観から。

地域別、およびタックスヘイブン諸国別に見ると、香港が突出していることがフロー、ストック両面からわかる。中国の対外FDIの動向は香港の対外FDIを見なきゃわからんのだが、香港のFDI動向はあれこれとググっても見つからん。UNCTADのデータでも取れればいんだがw
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香港、ケイマン諸島、英領バージン諸島以下の国別残高(ストック)。
オーストラリアとシンガポールが急増している。豪州はそのほとんどが鉱業。意外なところでは南アが非常に高いが、恐らくこれは08年に中国工商銀行による南アスタンダード銀行の20%の株式を取得したことによるもの。
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こちらはフローの動向。億ドル。
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ストック、フロー両面から伺える中国の対外FDIの特色は、
①タックスヘイブンへの集中
②周辺国への浸透
③途上国(特にアジア、アフリカ)に注力

①タックスヘイブンについては上位に集中していることから明らか。09年からはルクセンブルクでも急増している。

②周辺国については、ASEAN(オレンジ色)のほか、ロシア、モンゴル、韓国そして中央アジアが上位に着ていることから明白。

③途上国については、ASEANのほかアフリカ(緑色)が目立っている。

ここで日本が全く出ていないことが注目される。中国からの対日FDIは08年のフローで0.58億ドル、残高では5.1億ドルとなっており、経済規模や地理的近接性を鑑みると極めて少ない。この統計には少額、現金決済、非合法などのブラックな投資が含まれていないだろうとしても、韓国をはじめとした他の国々と比較してその少なさは際立っている。

山林など中国からの投資が喧伝されているが、絶対的な規模はまだまだ少ない、あるいは他国が感じているであろうプレッシャーと比較すればまだ小さいのかもしれない。

そもそも日本はさんざん対外投資を行っている(外国の資産を買っている)くせに、対内投資に対する警戒心が極めて強い。それでいながら軍事施設近辺や離島への外国投資に対する法的備えが皆無なのが笑えるというか、笑えないというか。。。
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by guranobi | 2010-10-24 23:50 | 中国
2010年 10月 18日

BOEのQE後の英債利回り、グラフだけ

QEのもっとも身近な先行事例のBOEを見ろってんですよね~ orz...

コメントするほどの知識も経験もないので、グラフだけで。
簡単に確認すると、QEアナウンス後に実質金利は暫くは緩やかに低下、BEIは短中期ゾーンを中心に緩やかに上昇した。名目金利は5年、20年は殆ど変わらないか若干上昇。ただし10年名目金利はBEIの上昇を反映して、緩やかに上昇。

10年に入ってからは、恐らく欧州ソブリンリスク拡大の影響から、名目金利、実質金利、BEIとも低下基調に。その結果、BOEはQEの再拡大を迫られている。
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by guranobi | 2010-10-18 20:01 | 金利・債券
2010年 10月 17日

バーナンキ講演についての追加・・・債券市場の反応

書こうと思っていて、忘れちまってました。QE2に対する債券市場の反応も見とくべきかな~と。

足下までの米国債金利の動向。上段は2008年以降の日次、下段は2010年の推移。
今年の4月以降、名目金利(UST)、実質金利(TIPS)、期待インフレ(BEI)ともに低下を続けていた。名目金利の低下のほうが実質金利の低下よりも大きかったため、BEIが低下した。

しかし、8/27のバーナンキのジャクソンホールでの講演を境に、USTの低下は緩やかになり、30年利回りは若干上昇。8/27以降、名目金利の5-30カーブは約50bpスティープ化した。一方、TIPSは講演からやや遅れて9月中旬から急低下。5年TIPSはマイナス金利に突入し、実質金利の5-30カーブは約40bpのスティープ化となった。BEIは講演直後から緩やかに上昇し、10月には急上昇した。

BEIで見る期待インフレは、30年債では4月の水準にまで上昇し、10年、5年はまだ4月水準を下回っている。それでも、バーナンキ講演後にBEIが上昇していることから、市場はFEDの追加金融緩和=QE2がデフレ回避に一定の効果をあげると見ている。
4月頃までと比較するならば、現状から50bpほどBEIが上昇するのが望ましいだろう。特に5-10年ゾーンは。今のところは「悪いインフレ期待の上昇」とは言えない。

一方、TIPSに示される実質金利は低下を続けてきた。QE2がデフレ回避に効果を上げるとしても、景気刺激には時間がかかると見ているのか、それともFEDの国債追加購入による需給要因で低下しているのか。
量的緩和の主目的は期待インフレを押し上げて実質金利を低位に保つことだろうから、TIPS利回りが低いこと自体はわかるんだが、5年で▲0.5%って低すぎないか?
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11月FOMCで発表される内容(ボリュームは? MBS買取再開は?物価水準ターゲット?)によって市場の反応も大きく違ってくるだろうが、中期ゾーンは実質金利も期待インフレも低すぎると思うので、ある程度評価される内容のQE2が出てくれば中期の金利が上昇しながらベア・フラットニングしていくんじゃないかと思うけど。


こちらは、10/15の1日だけの変化。Bloombergから。
講演後の米国債市場は、USTはベア・スティープし、TIPSはベア・フラットニング。結果、BEIは長期が若干上昇、中期は低下した。んー、わかんね。
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by guranobi | 2010-10-17 21:34 | 米国
2010年 10月 16日

バーナンキ講演 20101015

日経の記事に付け加えることもあまりないんですが、一応。

10/15 Monetary Policy Objectives and Tools in a Low-Inflation Environment

8/27のジャクソンホールでの講演(→僕の関連記事)と比較した大雑把な印象を。

経済成長見通しは基本的に変化ないものの、失業率の高止まりに重ねて触れている。"unemployment"という言葉が8月は7回だけだったのに、今回は31回も使われている。これは、高失業率=需給ギャップの継続を強く意識していることを意味し、物価に関する見通しが下方修正されていることと合わせて、デフレ・リスクに力点が置かれている。

物価に付いては、コアPCEデフレーターの低下傾向やその水準だけでなく、クリーブランド連銀が発表しているCPI刈り込み平均(9月前年比+0.8%)やCPI中央値(同+0.5%)にまで触れて、インフレ率の全般的な停滞への警戒を示している。
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構造的失業率に詳しく触れているのも今回の特徴だが、バーナンキの見解は失業率の上昇の大部分は構造的なものではなく、循環的な需要不足によるものだというもの。これは、金融緩和を含めた需要刺激策はより強力に、あるいはより長期間にわたって採られるべきだとの考えを示唆している。

そして恐らく今回の講演で彼が強調したかったのは、中盤以降の"The Objectives of Monetary Policy"というセクションじゃないかと思う。というのは、いわゆるデュアル・マンデートのうち物価安定に軸足をおいた議論をしており、インタゲ(的)政策に通じる意識が伺えるから。
FEDが示す失業率やインフレ率の長期見通しのうちインフレ率は中央銀行が決められるが、失業率は人口動態や構造的要因で決められるものだ、と述べている。
Although attaining the long-run sustainable rate of unemployment and achieving the mandate-consistent rate of inflation are both key objectives of monetary policy, the two objectives are somewhat different in nature. Most importantly, whereas monetary policymakers clearly have the ability to determine the inflation rate in the long run, they have little or no control over the longer-run sustainable unemployment rate, which is primarily determined by demographic and structural factors, not by monetary policy.

その上で、「FOMCの長期見通しよりも足下のインフレ率が低すぎる(too low)」とか、「失業率が高すぎる(too high)」、あるいは「足下のインフレ率のバッファーは低すぎる」「実質短期金利は高すぎる」という見解を述べており、デフレ・リスクへの警戒を明確に示している(細かい話だけど、"too low", "too high"をイタリック体で強調しているが、これも8月の講演では見られなかったこと)。

The longer-run inflation projections in the SEP indicate that FOMC participants generally judge the mandate-consistent inflation rate to be about 2 percent or a bit below. In contrast, as I noted earlier, recent readings on underlying inflation have been approximately 1 percent. Thus, in effect, inflation is running at rates that are too low relative to the levels that the Committee judges to be most consistent with the Federal Reserve's dual mandate in the longer run. In particular, at current rates of inflation, the constraint imposed by the zero lower bound on nominal interest rates is too tight (the short-term real interest rate is too high, given the state of the economy), and the risk of deflation is higher than desirable.

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ということは、8月の講演で4つの追加緩和策を行う条件として述べていた
a.デフレリスクが高まったとき
b.経済の著しい悪化が見られたとき
という2つのうち、デフレリスクが明確に述べられているので、QE2発動。

まぁ、確かに市場織り込み済みですけどねw

特に長期債券の追加購入の可能性が高いでしょうが、その”リスク”にわざわざ触れたのは、「QE2やってもインフレ期待を高めすぎないでね」というメッセージじゃないかと。

また、長期債券とは国債に限定していませんので。日経さんの(国債など)という追加表記は不要。

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前回公演の記事でも書きましたが、僕はバーナンキの経済見通しは楽観的すぎると思います。

彼は、家計の純資産は増加していて個人消費にプラスだと言っている。個人消費が低迷しているのは失業率が高止まっているためだと。
しかし、家計の債務負担はまだまだ大きくて、ホームエクイティローンの重しは当面続く。それが個人消費を押し下げ、雇用低迷の原因になっているんじゃないか?

そもそも、バランスシート調整が起きているんだから、雇用とか消費などのフローの背景にあるストック調整の動向にもっと力点をおいて分析するべきだろ~と思うんですけどね。

まぁ、FOMC議長にして大恐慌の専門家に対しておこがましい意見かもしれませんが、、、彼の経済見通しは因果関係が間違っていると思うんだけどなぁ。
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by guranobi | 2010-10-16 09:56 | 米国
2010年 10月 07日

”鉄道料金値上げ”ターゲットで、よろしく

たまに、人から「インフレになるのが怖いんだけど、デフレ脱却って具体的にどんなことなの?」ということを聞かれるので、そういう時には「例えば、鉄道料金が5年おきに値上げされるような状況。昔はそうだったでしょ」と答える。そう言うと、「あぁ、そういえば昔はそうだったね~」という返事が返ってくる。


たぶん日本人の半分近くが忘れたor知らないことでしょうが、かつて日本には”鉄道料金の値上げ”というものがありました。多くの鉄道が3-5年おき位で値上げしていて、どっかの鉄道の値上げのニュースが春の風物詩だった。

それが、、、JRの初乗り運賃は昭和61年から130円で変わらず。今年で四半世紀!
他のほとんどの大手私鉄の初乗りも20年近くにわたって値上げされていません。
これはかなり”異常”な事態だと思うのですよ。
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僕の主観的な観察ではw、公共料金とくに鉄道運賃はCPIとの連動性が比較的高いように思う。
NYの地下鉄やバスの公共料金を見ると水準の差はあれ、やはりCPIと似たような動きをしている。石油ショックで一般物価が急騰したときには高い伸びを示し、80年代以降は緩やかに上昇してきた。足下でも09年に値上げされている。
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日本のCPIにおける鉄道運賃のウェイトはJRとそれ以外を含めて、全国で1.4%、東京都区部で2.1%とさほど大きくはありませんが、多くの通勤・通学者にとってはほぼ毎日使うし、身近なものです。

公共料金の値上げは消費者に身近であるがゆえに、期待インフレに作用する効果が大きいんじゃないかと思うのです。まったく根拠はありませんがね。
そして、鉄道料金が変わらないのが当たり前だと思っている日本人の心理は、「デフレ期待」にどっぷりと浸されている。

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鉄道料金が変わらないことが当たり前なんだろうか?

例えば、三大都市圏の最混雑区間における平均混雑率・輸送力・輸送人員の推移を見ると、混雑率はS50年以降、低下を続けている。首都圏は社会人口の増加がつづいているのでここ5年ほどは横ばいだけど、鉄道料金が横ばいになった昭和60年以降で見ればやはり低下基調。

同一の鉄道料金で、より快適な鉄道の移動が可能となっている。これって購買力の上昇=物価の低下なんじゃない?

ということを調べた人がやっぱりいるんですね。
CPI鉄道運賃の品質調整と鉄道業の生産性への影響
この分析では、混雑率と移動速度を品質の代理変数としてヘドニック・アプローチで鉄道料金のCPIを修正しているんだが、それによると90年以降、00年まで趨勢的に鉄道料金の物価は下落してる。

これに加えて、冷房車の普及、事故防止のガードの設置、あるいは女性専用車・・・はサービス向上なのかはわかりませんがw、10年、20年単位で見れば、鉄道移動のサービスって向上していませんか?その間、鉄道料金が変わらないって、消費者としてはうれしいけどなんかおかしいかも。

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別に鉄道のサービスが改善しなくとも、5年おきくらいで鉄道料金の値上げが行われる状況。それこそがデフレ脱却だと思うのですよ。

日銀の公表資料に「CPIが1%になるまで緩和を続ける」な~んて一切書かれていないのに、これがインタゲだとか解釈する方々はなんと良心的なひとだろうと思う。「東シナ海は友愛の海」とのたもうた真性バカと重なって見えるのは私だけ?
これまで日本をデフレに陥れ、景気が回復し始めたと思えば「不均衡」とやらを理由に利上げを行ってきた犯罪組織の言うことをそれほどに好意的に解釈できる、その理由がわからない。僕は日銀から念書なり、言質なりを取るべきだと思いますけどね。

何の保障もないCPI1%説よりも、鉄道料金の値上げのほうがはるかに実態を伴ったデフレ脱却の証であり、金融緩和継続のためのターゲットになりうるのだとマジで思うのですよ。
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by guranobi | 2010-10-07 21:48 | 金融政策
2010年 10月 03日

米国のIIP⑧・・・ラスト

たぶん、最後です。長々と失礼しました。


改めてIIP(International Investment Position)って、なんだろう?IIPが資産評価で改善したからと言って、どんな意味があるんだろうか?

対外資産が為替や株価の値上がりで上昇したとしても、その資産を売ってドルに換金するわけじゃないのでドル需給を改善させるわけじゃない。IIPの状況に関係なく、ドルの売買を左右するのは経常収支であり、対米投資であり、米国からの対外投資のフロー、実需なのだろう。

IIPが資産評価で改善したからと言ってドルが支えられるわけじゃない。

借金している人が持っている株が値上がりしても、カネ貸しにとってはその株を換金しなければ意味がない。それよりも借入人の日々の資金繰りを重視するだろう。株価の上昇は、多少の心の拠り所にはなるかもしれないが。

米国の対外赤字が構造的に拡大しているのならば、やっぱりドル需給は悪化してドル安圧力になるんじゃないか?それがIIPのポジション改善に繋がって、経常赤字にもかかわらず米国の対外ポジションは悪化しない、あるいは改善さえすると。これは債権国にとってはフラストレーションがたまることだろう。


米国のIIPが改善することの重要な意味は、債権国にとって購買力が落ちるということじゃないかと思う。
人民元高で中国が被った損失は3000億ドル程度。しかし、人民元高が進めば損失額はさらに膨らむ。
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んー、全く締まんないな。。。

中国の短期金融市場の改革とか、人民元の国際化、対外直接投資の動向とかも絡めたかったんですけどね、あえなく挫折です。

大変、申し訳ないです。

最後に、日本の経常収支累計額と対外純資産から逆算した損失額(購買力の喪失)は120兆円ほどです。これもまた、日銀のデフレ政策の功績。
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by guranobi | 2010-10-03 19:25 | 為替