カテゴリ:金融規制( 2 )


2010年 01月 05日

欧州の新金融監督体制

いろんなことをサボっていましたので、ぼちぼちと。。。

みずほ総研:金融危機の再発防止に向けた金融機関のモラルハザードへの対応
サブプラ危機を教訓としてG20などで金融機関監督体制が議論されているらしい。これは”リビング・ウィル(生前遺言)”をキーワードに議論の流れを俯瞰した良質のレポートだと思う。
ここでのリビング・ウィルとは、大手金融機関が破綻に陥った場合の処理を容易にするために、その処理計画を予め準備するように義務付けることらしい。

詳細はお読み頂くとして、みずほ総研はその実効性に疑問を呈しているように思える。
①平常時に破綻時の計画をたてることがそもそも可能か
②立案後の環境変化をどう織り込むのか
③計画の内容と第三者との関係

といった点を指摘している。これらの指摘はもっともなんだけど、それ以上に疑問なのは、破たん処理の際に公的資金(支援)を前提とした計画が認められるのか、ということではないかと思う。
破たん処理には精算だけじゃなく、例えばブリッジ・バンクに繋いだりすることもある。あるいは流動性危機に対処するために資金が必要になることもあるだろう。そもそもシステミックリスクが発生したときに、破綻金融機関に信用ないしは資本を供与する民間企業がいないからこそ、問題が深刻になるわけで。

このリビング・ウィルというアイデア自体が、サブプラ危機に際して公的資金が大量に注入されたことへの反省を背景としているようなので、公的資金を処理計画に組み込むことは政治的に難しいのではないか?だとすると、逆にその計画の実効性に疑問がつくように思うが。。。

"遺言"という言葉自体に、大手金融機関へのバッシングのニュアンスが感じられるんだが。

リビング・ウィルに最も熱心なのは英国らしい。英保守党の政策をざっと見てもこの方針を支持しているようなので、今年5月までに予定されている総選挙の結果に関わらず、まぁ、導入される方向なんですかね。

大手金融機関の担当者の業務がむちゃくちゃ増えるだけのような気がしますが。。。

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これに関連して欧州の監督制度の変更の状況もチラ見してみようと。
預金保険機構:欧州委員会:新しい金融監督体制をつくるための法案を作成

欧州システミック理事会(ESRB)という上部(マクロ)監督機構と、欧州金融監督システム(ESFS)という下部(実務)監督機構を作るらしい。

ESRBの一般委員会の構成が61名って笑えますが、それ以上に重要と思われるのは次の箇所。

ESRBの警告および勧告に法的拘束力はないが、指摘を受けた当該国は、何らかの対応をとるか、とらない場合にはその理由をきちんと説明しなければならない。
-警告および勧告を発出した事実を公表するか否かについては、ESRBがケース・バイ・ケースで判断(公表に際しては、一般理事会<後述>の3分の2以上の同意を条件とする方針)。
-欧州監督機関(ESAs)には、各国監督当局者間の調停、規制・監督ルールの設定、危機への対応等を行うための権限等が付与される(但し、欧州監督機関(ESAs)の決定は、加盟国の財政支出を義務づけるものであってはならないとされている)。


サブプラ危機を振り返って、金融危機への対応として重要と僕が思うものは次の点。
①迅速な事態の把握と意思決定
②公的資金
③平時のディスクロージャー

預金保険機構のまとめをざっと読む限り、新しい欧州の監督制度はいずれも満たしていないように思う。
実務を担当するのであろうESFS(あるいはESAs)は、結局、各国監督当局のコミュニケーションの場のように見えるし、ESRBは屋上屋を重ねて体裁を繕っているように見える。カネの権限もなく、意思決定の迅速化も図られていないようだ。
穿った見方をすれば、各国の監督当局とは別にEU規模での監督当局を作ることで、責任と権限の所在が不明確になるかもしれない。金融機関の実態を主に把握するのがESFSやESAsで、最終的にカネを出すのが各国政府という構図になれば、意思決定に支障をきたすこともあり得るだろう。今回は各国単位でバラバラに事態に対処したのに、それすらも難しくなるかもしれん。
また、欧州の金融機関は米国以上にユニバーサルバンキング化が進んでいて、INGなんて保険会社か銀行かもよく判らんし、UBSは母国がどこかも不明w システミックリスク回避のために、そもそも大手金融機関の監督が議論の対象なのだから、監督機関(ESAs)を銀行、証券、保険・年金と分野別に分けずに、統合した監督機関を作るべきでは?

欧州らしいと言うべきか、文言を重ねていても、中身が不明。
金融システム安定化のためにオーバーレギュレーション気味に規制を強化することが悪いとは思わないけれど、それでも失敗することはありうる。万が一の時の備えは必要でしょ。

次の危機が何年後か何十年後かはわからないけれど、欧州の対応は、意思決定の面でもカネの面でもまたもや遅れることになるんじゃないかな。

ただ、、、今回の案では中央銀行、特にECBが深く関与することになりそうなので、(各国政府への働きかけを含めて)ECBの対応能力次第では、迅速な対応も期待できないわけではない、、、かも?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

(追加)

やはりみずほ総研の分析。
欧米主要銀行の不良債権問題の見通し
・欧米銀の問題が証券化から景気悪化による不良債権に移行している
・(みずほはやや楽観的だが)欧米銀、特に英銀の収益性には依然として問題があり、脆弱
・それでも、貸引を除く収益の基調は安定している(特に米銀)
・欧州銀の中東欧エクスポージャーは、オーストリア、イタリアを除けば限定的
・UAEへのエクスポージャーは英銀5兆円、独仏米それぞれ1兆円

欧州には問題が残っているようで。。。
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by guranobi | 2010-01-05 01:32 | 金融規制
2009年 03月 18日

銀行自己資本に関して

REUTER: 〔アングル〕日銀のTier2支援策、大手行の調達余力は限界との見方も

REUTER: 〔焦点〕銀行自己資本に「景気循環増幅効果」が追い打ち、国際金融の重要テーマに

銀行の自己資本が株価下落や景気後退の影響で毀損している。。。って、そんなことは10月の段階で分かり切っていたことだ。予防的利上げは喜んでやるくせに、予防的?利下げ、金融緩和にはとことん抵抗し、経済がメタメタになってから嫌々、小出しにする。

日銀の劣後ローン引き受けは一定の効果を上げるかもしれないが、プラス効果というよりもマイナスの影響を多少緩和する程度だろう。
長期国債買い入れの増額も、日銀にとっては既定路線。そもそも12月の段階で月+2000億円が少なすぎるわけで、もっと大幅な買い入れを行っておくべきだった。今回の+4000億円も、必要とされる経済対策の規模(20-30兆円、月あたり1.6-2.5兆円)の半分にも及ばない。

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それはさておき、プロシクリカリティ抑制施策というのは興味深い。好況時の所要自己資本比率を高め、不況時には下げる、と。

だけど、景況判断をなにに基づいて行うのかなー。
GDPギャップでは不確定要素が大きいだろう(構造的摩擦的失業率の正確な算定が難しいため)。日銀が予防的利上げの口実に使ったように、実際はGDPギャップがマイナスでも、自己資本比率が引き上げられ、貸し渋りを助長することも十分にあり得ることだ。日銀は予防的利上げを補完するために、この制度を悪用するかもしれない。てか、きっとそうすると思うw

米不動産バブルに苦しむ今の状況では、CPIなどの物価指標を参考にするとも思えないし。

景況判断が遅れると、「低金利の長期化の弊害」とやらと同様に、景気が過熱してきているのに貸出が加熱したり、逆に不況が始まっている段階で貸し渋りを助長したりと、かえって景気サイクルの振幅を大きくするだろう。プロシクリカリティの助長にw
その点は、アホな金融政策の弊害と同じ。

参考
大和総研: 共同監視制度による国際金融システムの安定と多国籍金融機関のビジネスモデルの再構築
第一生命経済研究所: 銀行のプロシクリカリティ問題
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by guranobi | 2009-03-18 13:36 | 金融規制