カテゴリ:米国( 28 )


2010年 12月 28日

米国の中期経済見通し? 雇用・物価動向④・・・シナリオ

最後に、実質GDPのシナリオごとに予想される雇用・物価動向を確認しましょう。実質GDPの前期比年率の伸び率が、+3.25%、3.75%、+4.25%、そして+2.75%のときの推移です。

各機関の見通しのように+3.25%程度の成長率では、デフレ圧力の顕在化は避けられないように思います。11年における雇用者数の月平均増加数は+15万人程度で、失業率は11年末で9.6%、12年末でも8.8%にとどまり、この間、賃金上昇率の低下が続き、ULCは12年から長期間のマイナスに至ります。

仮に+4.25%程度で推移すれば11年の雇用増加数は月平均+25万人程度、失業率は11年末8.9%、12年末には7.3%程度に。賃金上昇率は13年前半の+1%程度でボトムを打ち、ULCもかろうじてゼロ程度から反転。デフレ回避に成功するパターン。

+2.75%程度の成長率では、18年になってもデフレ脱却の目処も立たない。日本の失われた20年に至るパターンです。
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これまでブログで書いてきたとおり、家計のバランスシート調整には14年くらいまで掛かると思われますし、また、銀行部門の不良債権処理が遅々として進まない場合には金融部門の機能不全も需要創出の足かせとなり得ます。
目先、11-12年は+3.25%から+3.50%程度の成長にとどまり、バランスシート調整が概ね終了するであろう14年あたりから+4%を大きく上回る成長を比較的長期間に渡って続けるという感じじゃないかと、今のところは思う次第。

債券市場の展望としては、ある程度の成長率が見られつつもデフレ・リスクが高まる展開なので、実質金利は比較的安定する一方で、BEIの低下が特に短-中期セクターにおいて見られると思料。よって、再びブル・スティープの展開を予想します。

株は、、、わかんねーなー。今年同様にボラの高い展開ながらも、カネ余り相場継続でいいんじゃないかな?
追加・・・売りたくて仕方がない原油だが金余り継続なので120ドルくらいまで上昇を続けると勝手に思う。

注目点は賃金動向ですね。
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by guranobi | 2010-12-28 20:53 | 米国
2010年 12月 28日

米国の中期経済見通し? 雇用・物価動向③・・・労働参加率

需要増加によってどの程度の雇用が生み出されるのか、そして失業率の推移はどうなるかを考えるためには労働参加率を考慮しなければなりません。

就業者数+失業者数=労働力人口
失業率=失業者数/労働力人口
労働参加率=労働力人口/人口

労働参加率は、(生産年齢)人口のうち労働市場に参入する意志を持った人の割合を示しています。
詳しい考察は、例えばサンフランシスコ連銀のレポートなどをご覧ください。
SF-Fed: Labor Force Participation and the Future Path of Unemployment
ロイター:景気後退で職失った人の求職再開が失業率低下ペースを左右=米SF地区連銀

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米国の労働参加率を年齢階層別(5歳区分、男女計)で見たもの。年齢別に見ると、労働参加率には90年代からの趨勢が伺える。
①若年層の労働参加率が趨勢的に低下している。
②中年層の労働参加率も趨勢的に低下している。
③高年齢層の労働参加率は逆に上昇している。
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SF-Fedのレポートではティーンエージャーの労働参加率の低下は進学率の上昇(と在学者の就労率≒アルバイトの低下)によるものだとしている。しかし、恐らくは20代の労働参加率の低下も、そしてもしかしたら30代前半の労働参加率の低下の一部も進学率の上昇によるものだと思う。
特に16-34歳の男性の場合には進学率の説明力は有意に高い。女性の進学率の有意性は25歳以上のケースで低下するが、これは90年代半ばまで女性の社会進出が継続して高まっていたためじゃないかと思う。
ちなみに、ここで取り上げている”進学率”は正確には卒業率?(Earned Degrees)であり、ソースはStatistical Abstract of the United States。この数値には海外からの留学生が含まれている可能性があるが、それは気にしないw(たぶん留学生は含まないが、なんらかのデータの重複はあるかも)。
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また、高齢者の労働参加率が上昇している理由については、SF-Fedのレポートは高齢者の体力の向上や年金受給額の引き上げ(受給開始年齢が遅いほど年間受給額が増加する=日本と同じ)、医療費負担の高まり、などを指摘している。だが、これらの要因以上に重要なのはIT化の進展ではないかと思う。なぜなら、60歳以上の全ての世代の労働参加率の上昇が90年代の半ばから始まっており、その後趨勢的に上昇を続けているから。IT化の進展によって体力は労働の制約とはならなくなり、あるいは在宅勤務を通じて労働供給が可能となれば通勤の難しさも制約とはならなくなるだろう。社会でPCやネットに触れてきた世代が高齢者になるとともに、高齢者の労働参加率の上昇傾向は続くだろうと考える。

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また、人口構成の高齢化そのものが米国全体での労働参加率の低下を引き起こしている。日本ほどではないが米国でも高齢化が進んでおり、目先はさらに進む見込み。そして、上昇傾向にあるとはいえ高齢者の労働参加率は中年層のそれよりも低いため、高齢化が進むほどに労働参加率は低下する。
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詳しい説明は省くけど、年齢別の労働参加率を2007年時点の数値に固定したり、労働参加率と人口構成の変化を累積したりして高齢化による労働参加率の低下を計測すると、92年から10年までの期間で▲1.5%pほどになる。また、今回の景気後退に相当する07年末から10年までの労働参加率の低下▲1.5%pのうち、▲0.5%pほどが高齢化によるものと計測される。今後は高齢化が幾分加速することもあって、年間▲0.2%pほど労働参加率は趨勢的に低下する(景気変動要因を除く)。
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さらに詳しい説明は省くけどw、性別・年齢階層別の労働参加率を失業率、進学率、男女の賃金格差、95年屈折パターンのトレンド、実質最低賃金を使って推計し、その延長をナメナメ修正を加えて、全体の労働参加率を求めるとこんな感じに。
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こいつをもとに失業率を計算して、最初の賃金上昇率の加速度との相関に繋げたという訳っす。

なんか、、、無駄な努力な気がしてきた。。。
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by guranobi | 2010-12-28 17:30 | 米国
2010年 12月 28日

米国の中期経済見通し? 雇用・物価動向②・・・労働生産性

前の記事で見たとおり、ULCを予想するためには労働生産性の仮定を置かなければなりません。生産性の決定要因は、教育や人口・産業構成など様々な仮説があるようですが、たぶん未だに確たる説明は得られていないと思います。なので、下手に推計するよりもトレンドを見たほうが適切かと思います。ま、その方が楽ですしねw

このグラフは米国の労働生産性の推移を対数グラフで見たものです。米国の労働生産性は明らかに長期的なトレンドを示しており、そして戦後の間に幾つかの屈折点があります。おおまかに言って、73年に労働生産性上昇率は低下、97年に上昇、そして04年に再び低下している。景気動向に短期的に左右されることはあっても、このトレンドの変化は(短期的な)景気循環とは無関係であるように思います。
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また、労働投入の他に資本投入も考慮した全要素生産性(MFP)で見ても、同様の時期にトレンドの転換が見られます。
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期間を少し短縮して80年以降のグラフです。紫色の期間はいわゆるドットコム・バブルの時期で、生産性革命!?とか言われていましたね。この生産性上昇率の加速が企業収益を押し上げ、バブルを引き起こし、そしてサプライサイド・ショックから02年ころのデフレ懸念を生みました。そして、デフレ懸念に対応した利下げと04年からの生産性上昇率の下方屈折がより不健全なサブプラ問題に繋がった、という解釈もできるかもしれません。

ここで注目したいのは09年の労働生産性の大幅な上昇です。04年以降のトレンドから大きく逸脱するほどの生産性の上昇が見られている。これが新たな転換なのか、それとも一時的なジャンプに過ぎないのか・・・
もしこれが新たなトレンド転換ならば、生産性上昇と企業収益の拡大、そして非常に長期間に渡るであろう超金融緩和の組み合わせが予想されるので、米国株のバブルが再び?というシナリオもあり得る。が、同時にサプライサイド・ショックからデフレがより深刻化することにもなる。
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そこで、業種ごとの付加価値額と労働投入量をもとに要因分析を行ったグラフがこれです。上が前期比年率、下が前年比。GDPと付加価値額のカバレッジの違いやデフレーターの設定の仕方からやや説明力は劣りますが、おおまかな内訳は伺えます。これによると、09年の労働生産性上昇率のうちおよそ半分は(不動産を含めた)金融セクターから生じている。一方で、製造業、卸売業、情報などの幅広い業種でも労働生産性の高い伸びが見られていた。
09年の非常に高い労働生産性の伸びは金融セクターの雇用削減に負う面が大きいようだが、幅広い業種でも高い伸びが見られているため、生産性トレンドが転換した可能性もあながち否定できない。その場合、クラウド・コンピューティングやiPadの企業活用など、IT活用の深化がストーリーとして考えられます。まぁ、今後の状況を要確認といったところなのです。
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そして、今回の予想では労働生産性の伸びを低めの+1%としました。その理由は、09年のジャンプを深刻な景気後退に伴う一時的なものと考えたからです。04年以降のトレンドに徐々に回帰していくとすると、低めの伸びににとどまる。どっちに転ぶかはわからんが。。。
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by guranobi | 2010-12-28 14:54 | 米国
2010年 12月 27日

米国の中期経済見通し? 雇用・物価動向①

来年以降の米国経済の動向を考えてみました。面白い見通しになるかもしれんなーとワクワクしながらやってみたのですが、ありきたりの、ツマンネー内容でちょっと気落ちしています。
まぁ、それでも一応まとめましょう。

今回の予想もかなり手抜きです。各機関のGDP見通しがだいたい+3%強らしいので、そのときの雇用や物価動向はどうなるだろうか、ということを考えました。

その結果、実質GDPが年率+3.25%で推移する場合には12年から17年にかけて単位労働コスト(ULC)がマイナスで推移し、デフレ圧力は今以上に顕在化することに。ULCがマイナスにならないためには実質GDPが+4.25%以上で成長しなければならないが、そのペースを続けると16年以降のULCは+2%を超えて加速する。恐らくはここらへんの数字が米国のデフレとインフレの境目になるんじゃないかな~と思った次第。
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このような結論に至る理由のうちで最も重要なのは、時間あたり賃金の上昇率の変化(加速度)と失業率の関係です。このグラフは65年以降の四半期ベースの両者の関係をプロットしたもので、赤い○が直近の10年Q3(7-9月期)です。近似線がy軸(賃金の加速度)の0と交差するのは、x軸(失業率)が概ね6%の水準なので、失業率が6%を上回れば賃金上昇率(ここでは前年同期比)は前年よりも低下する。実質GDPが+3.25%で推移した場合に失業率が6%を下回るのは15年なかばなので、それまでは賃金上昇率が低下する。
今回の試算では、失業率にかかる係数をこのグラフ通りではなく、3/4にしています。つまり、Y=▲0.2852Xではなく、Y=▲0.2139Xに変更している。その理由は、直近までの推移が傾向線よりもややモデレートな水準にあること、QE2の効果、ゼロ以下での賃金の硬直性などを考慮したためです。もし、65年以降の両者の相関をそのままあてはめるとよりシビアなデフレ局面を示す数値になります。
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時系列での両者の関係を見るとこんな感じに。加速度の推計値はわりと賃金動向を正確に示していると思います。賃金上昇率は最も低い時でもゼロ近辺にとどまりますが、労働生産性がある程度のプラス(今回は+1%と置いた。理由は後ほど)ならば、ULCはマイナスになる(ULC=時間あたり報酬-労働生産性)ので、最初のグラフような結果になるわけです。
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次の記事では、このような結論に至った他の要因、労働生産性や労働参加率などについて若干の補足を。

たぶん、、、似たようなことは各調査機関が出していると思うんですが、最近は経済レポートもろくに読んでいないので重複があったらすみません。
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by guranobi | 2010-12-27 21:26 | 米国
2010年 12月 16日

11月FOMC後の米債金利の上昇

もちろん債券もど素人なので思いつきでしかないんだが、以前の記事でこう書いた。

中期ゾーンは実質金利も期待インフレも低すぎると思うので、ある程度評価される内容のQE2が出てくれば中期の金利が上昇しながらベア・フラットニングしていくんじゃないかと思うけど。

で、偶然にもそういうことが起きたようだw
11/3のFOMCから現在までの金利変化は、5年+97bp, 10年+82bp, 20年+61bp, 30年+45bpと中期ゾーンを中心にベアフラットしている。BEIは5年+18bp, 10年+5bp, 30年▲16bpとこちらもフラット化。
結局、2番底懸念、デフレ懸念が強すぎて中期ゾーンの実質金利が▲0.5%、BEIが+1.2%と低下しすぎていたレベルからの水準訂正が起き、それに引っ張られるように長期ゾーンも売られたのだと僕は解釈する。これまでのところはQE2の失敗と見るよりも、QE2に対する信認の表れだと思う。皮肉な話ではあるけど。
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QE2の真価が問われるのは行き過ぎた低金利の水準訂正が行われた後、すなわちこれからで、国債利回りで言えば長期金利がこれ以上上昇するのは好ましくない。短期も、QE2が少なくとも2年は維持されると考えれば、3-5年の金利水準はちと高めの印象。
前回、最後の利下げとなった2003年7月にも短期金利の上昇が見られた。たぶん、追加利下げを折り込み過ぎていたために起きた修正局面だと思うが、このときと同様に今回も水準訂正後にじわじわと短期金利も下がっていくんじゃないかな?カーブはこっから再び小幅のスティープ化に向かうんじゃないかと。
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また、国債利回りだけじゃなく、その他の資産の動向も重要。株価はモチロンのこと、社債、モーゲージ、地方債などの対国債スプレッドが潰れていくかどうかも大事。社債、モーゲージは11月FOMC後、あるいは8月ジャクソン・ホールの講演後、スプレッドが潰れてきている。だが、地方債は不穏な動き。。。
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by guranobi | 2010-12-16 00:37 | 米国
2010年 12月 13日

2010Q3 米国Flow of funds

米国のFlow of fundsが発表されました。あまり変化はなかったと思いますが、気づいた点をごくごく簡単に。

まず米国債の保有状況ですが、海外の保有意欲は活発ですね。前回教えてもらったTICデータによると英国(88 bil)と日本(80 bil)の買いがメインのようで、英国経由のオイルマネー?中国かなぁ。中国の(直接的な)買いも23 bil ほどあるが、多くはない。
Monetary AuthorityすなわちFEDが再び買い手となっているが、これは次に見るMBS・エージェンシー債の減少見合いの買いだろう。また、家計/NPOの買いが細っているのは"質への逃避"が収まりつつあるのかもしれない。
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つづいてエージェンシー債およびエージェンシーMBSの保有状況。
FEDの保有が減少しているのはもちろん売却したわけじゃなく、期限前償還によるもの。また、投信(Mutual Fund)の買いが加速しているように見えること、そして家計/NPOが水準は極めて低いが保有を増やし始めていることも市場環境が落ち着いてきていることの現れかも。色メガネですか?w
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社債・外債の保有者(左側)と発行体(右側)。ここにはサブプラ関連の汚物がおそらくは含まれていて、右側の発行体のうちABS発行体によるものがそれ。着実に減っているがまだまだ243 bilも残っている。
一方で非金融法人の発行は引き続き活況で(右上)、これに対応するように商業銀行の保有が大幅に増えている。Q1に見られたような会計制度変更に伴う特殊要因もなさそうなので、これは純増と考えていいだろう。腐臭を抱えつつも銀行部門がリスクテイクし始めているのならばQE2が成功する兆しかもしれない。銀行のcharge off rateも下がっているみたいだし、11月までのデータを見ると資産圧縮もようやく終わったのかもしれない。11月には国債・エージェンシー債の保有が減ったのかぁ。何ヶ月ぶりの減少なんだろう?
この社債増加の動きが貸し出し増に波及し、そして保険・年金などの限界的金融部門の社債保有が増加に転じるならばさらに心強い。
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モーゲージの保有者の内訳。商業銀行は引き続きモーゲージを圧縮している。まー、リスクテイクといってもセクター、仕組み、満期、様々あるわけで減らしている分野も当然ある。
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改めて怪しく思えるのはABSのモーゲージ保有の減り方がとても安定していること。四半期ごとの増減を見るとこんな感じで、定規で測ったように減っているわけじゃないんだが、、、金利リセットの度にフォークロジャーに計上されているからかな?だとするともう暫くすると再び減少ペースが加速するんだろうか?
ウィキリークスがBACの資料を公表したら一気に減っちゃうのか?
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そしてホームエクイティローンの残高の対可処分所得比の推移。これも安定的に減っています。Q3の減少は年率81 bilで、可処分所得の同▲0.7%。消費・雇用の抑制要因だと思うんだけどな~
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たぶん、月次・週次のデータを詳しくフォローするとまた違った側面が見えるでしょう。また、FOFの切り口ももっと他にあると思うんですが、、、ナマケモノなのでご勘弁を。
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by guranobi | 2010-12-13 02:45 | 米国
2010年 10月 26日

Googleの実効税率

週刊isologue(第82号)Googleの節税とネット時代の国際税務(前編)

僕はisologueさんのメルマガを購読していないので中見はわかりませんが、GOOGのF/Sを見ているときにほ~と思ったことがあります。GOOGの10-Kには実効税率に関する説明がありますが、米国と外国との税率の違いによる効果が、(米国法人税35%に基づく)本来の税額の45-50%ほどもあるようなのです。
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この数値に基づいてGOOGの外国での実効税率を試算したものがこれ。09年では7.1%ということに。Bloombergの元記事の2.4%とは違いますが、いずれにせよ相当に低い。
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GOOGの節税についてはここで書いてあるように、Double Irishとか Dutch Sandwich といった手法が使われているらしい。詳しいことは分からんが、タックスヘイブンにある持ち株会社を幾重にも経由するものらしい。
Irishtimes.com: How Google dines on 'Double Irish' or 'Dutch Sandwich'

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米国のIIP (International Investment Position)に関する以前の記事で、米国の対外直接投資(FDI)の収益率が高い理由の1つとして、持ち株会社を利用した節税を指摘した。というか、単に国際通貨研究所のレポートをパクっただけだがw

国際通貨研究所:MOF委嘱「米国の対外投資分析と開発途上国及び我が国へのインプリケーション」


このレポートは実に興味深い指摘が盛りだくさんで、その1つが持ち株会社に関するもの。
米国の対外FDIの業種分類は、通常は投資先によって分類されている。そのため、”持ち株会社”という業種による対外FDIが36.5%(09年)に及んでいる。しかし、投資である親会社の業種分類で見ると様子は大きく変わってくるらしい。

このレポートのp33の表を引用させていただいて、、、
投資先の業種分類すなわち通常のFDI分類では、米国の対外FDIのうち製造業は20.7%でしかない。しかし、親会社による分類では製造業の比率は59.5%と跳ね上がる。GOOGも含まれる情報産業も2.7%から4.0%に上昇している。尤も、このデータは2004年のものなのでGOOGはまだ含まれていないか、含まれているとしても僅少でしかないが。

製造業をはじめとして多くの米国企業が持ち株会社を通じた節税を行っていることがわかる。決してGOOGだけでないし、恐らくはネット時代になる以前から行われてきたことだ。
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この親会社に因る分類のFDIデータを探したけれど2004年以降のものは見つけられず。多分、これだと思うが。

BEAにはより詳細な税制度と多国籍企業の活動を分析したペーパーがある。これによると法人税のみならず間接税も多国籍企業の行動に影響を与えているらしい。企業がより大きく、より国際化するほどに節税のための持ち株会社の利用が活発化し、その影響はR&Dや企業内取引まで幅広く及ぶ傾向にあるようだ。
BEA: Taxation and Multinational Activity: New Evidence, New Interpretations

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米国の貿易収支が巨額の赤字を計上している理由の1つは、米国企業が海外展開を進め、国内からFDIという形で海外に製造拠点を移したからでもある。日本のように輸出拠点を維持して財輸出を続けるか、それとも米国のように資本の輸出(≒FDI)を行ってより高い投資収益を追求するか、という手法、スタイルの違いが貿易収支の対照的な動向となって現れている。そして、そのウラではIIPの時価評価(キャピタルゲイン)が米国は大幅なプラス、日本は大幅なマイナスとなっている。もちろん、米国の対外FDIの収益率が高いため(そして日本がデフレで円高がつづいているため)だが、その高い収益率のどの程度が節税効果によるものなのか、そして本来の競争力によるものなのかはわからんが。

米国の輸出競争力が低下して貿易赤字を生んでいるとしても、だからといって米国製造業の競争力が低下しているわけではない。P&Gやデュポンなどの巨大な米国製造業は依然として高い競争力とプレゼンスを維持しているのではないか?

貿易収支のみならず、FDIのあり方やIIP、そしてIIPの時価評価(キャピタルゲイン)は総合的に見ていくべきもののようだ。

が、今の僕にはわからんことばかり。。。
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by guranobi | 2010-10-26 19:02 | 米国
2010年 10月 17日

バーナンキ講演についての追加・・・債券市場の反応

書こうと思っていて、忘れちまってました。QE2に対する債券市場の反応も見とくべきかな~と。

足下までの米国債金利の動向。上段は2008年以降の日次、下段は2010年の推移。
今年の4月以降、名目金利(UST)、実質金利(TIPS)、期待インフレ(BEI)ともに低下を続けていた。名目金利の低下のほうが実質金利の低下よりも大きかったため、BEIが低下した。

しかし、8/27のバーナンキのジャクソンホールでの講演を境に、USTの低下は緩やかになり、30年利回りは若干上昇。8/27以降、名目金利の5-30カーブは約50bpスティープ化した。一方、TIPSは講演からやや遅れて9月中旬から急低下。5年TIPSはマイナス金利に突入し、実質金利の5-30カーブは約40bpのスティープ化となった。BEIは講演直後から緩やかに上昇し、10月には急上昇した。

BEIで見る期待インフレは、30年債では4月の水準にまで上昇し、10年、5年はまだ4月水準を下回っている。それでも、バーナンキ講演後にBEIが上昇していることから、市場はFEDの追加金融緩和=QE2がデフレ回避に一定の効果をあげると見ている。
4月頃までと比較するならば、現状から50bpほどBEIが上昇するのが望ましいだろう。特に5-10年ゾーンは。今のところは「悪いインフレ期待の上昇」とは言えない。

一方、TIPSに示される実質金利は低下を続けてきた。QE2がデフレ回避に効果を上げるとしても、景気刺激には時間がかかると見ているのか、それともFEDの国債追加購入による需給要因で低下しているのか。
量的緩和の主目的は期待インフレを押し上げて実質金利を低位に保つことだろうから、TIPS利回りが低いこと自体はわかるんだが、5年で▲0.5%って低すぎないか?
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11月FOMCで発表される内容(ボリュームは? MBS買取再開は?物価水準ターゲット?)によって市場の反応も大きく違ってくるだろうが、中期ゾーンは実質金利も期待インフレも低すぎると思うので、ある程度評価される内容のQE2が出てくれば中期の金利が上昇しながらベア・フラットニングしていくんじゃないかと思うけど。


こちらは、10/15の1日だけの変化。Bloombergから。
講演後の米国債市場は、USTはベア・スティープし、TIPSはベア・フラットニング。結果、BEIは長期が若干上昇、中期は低下した。んー、わかんね。
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by guranobi | 2010-10-17 21:34 | 米国
2010年 10月 16日

バーナンキ講演 20101015

日経の記事に付け加えることもあまりないんですが、一応。

10/15 Monetary Policy Objectives and Tools in a Low-Inflation Environment

8/27のジャクソンホールでの講演(→僕の関連記事)と比較した大雑把な印象を。

経済成長見通しは基本的に変化ないものの、失業率の高止まりに重ねて触れている。"unemployment"という言葉が8月は7回だけだったのに、今回は31回も使われている。これは、高失業率=需給ギャップの継続を強く意識していることを意味し、物価に関する見通しが下方修正されていることと合わせて、デフレ・リスクに力点が置かれている。

物価に付いては、コアPCEデフレーターの低下傾向やその水準だけでなく、クリーブランド連銀が発表しているCPI刈り込み平均(9月前年比+0.8%)やCPI中央値(同+0.5%)にまで触れて、インフレ率の全般的な停滞への警戒を示している。
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構造的失業率に詳しく触れているのも今回の特徴だが、バーナンキの見解は失業率の上昇の大部分は構造的なものではなく、循環的な需要不足によるものだというもの。これは、金融緩和を含めた需要刺激策はより強力に、あるいはより長期間にわたって採られるべきだとの考えを示唆している。

そして恐らく今回の講演で彼が強調したかったのは、中盤以降の"The Objectives of Monetary Policy"というセクションじゃないかと思う。というのは、いわゆるデュアル・マンデートのうち物価安定に軸足をおいた議論をしており、インタゲ(的)政策に通じる意識が伺えるから。
FEDが示す失業率やインフレ率の長期見通しのうちインフレ率は中央銀行が決められるが、失業率は人口動態や構造的要因で決められるものだ、と述べている。
Although attaining the long-run sustainable rate of unemployment and achieving the mandate-consistent rate of inflation are both key objectives of monetary policy, the two objectives are somewhat different in nature. Most importantly, whereas monetary policymakers clearly have the ability to determine the inflation rate in the long run, they have little or no control over the longer-run sustainable unemployment rate, which is primarily determined by demographic and structural factors, not by monetary policy.

その上で、「FOMCの長期見通しよりも足下のインフレ率が低すぎる(too low)」とか、「失業率が高すぎる(too high)」、あるいは「足下のインフレ率のバッファーは低すぎる」「実質短期金利は高すぎる」という見解を述べており、デフレ・リスクへの警戒を明確に示している(細かい話だけど、"too low", "too high"をイタリック体で強調しているが、これも8月の講演では見られなかったこと)。

The longer-run inflation projections in the SEP indicate that FOMC participants generally judge the mandate-consistent inflation rate to be about 2 percent or a bit below. In contrast, as I noted earlier, recent readings on underlying inflation have been approximately 1 percent. Thus, in effect, inflation is running at rates that are too low relative to the levels that the Committee judges to be most consistent with the Federal Reserve's dual mandate in the longer run. In particular, at current rates of inflation, the constraint imposed by the zero lower bound on nominal interest rates is too tight (the short-term real interest rate is too high, given the state of the economy), and the risk of deflation is higher than desirable.

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ということは、8月の講演で4つの追加緩和策を行う条件として述べていた
a.デフレリスクが高まったとき
b.経済の著しい悪化が見られたとき
という2つのうち、デフレリスクが明確に述べられているので、QE2発動。

まぁ、確かに市場織り込み済みですけどねw

特に長期債券の追加購入の可能性が高いでしょうが、その”リスク”にわざわざ触れたのは、「QE2やってもインフレ期待を高めすぎないでね」というメッセージじゃないかと。

また、長期債券とは国債に限定していませんので。日経さんの(国債など)という追加表記は不要。

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前回公演の記事でも書きましたが、僕はバーナンキの経済見通しは楽観的すぎると思います。

彼は、家計の純資産は増加していて個人消費にプラスだと言っている。個人消費が低迷しているのは失業率が高止まっているためだと。
しかし、家計の債務負担はまだまだ大きくて、ホームエクイティローンの重しは当面続く。それが個人消費を押し下げ、雇用低迷の原因になっているんじゃないか?

そもそも、バランスシート調整が起きているんだから、雇用とか消費などのフローの背景にあるストック調整の動向にもっと力点をおいて分析するべきだろ~と思うんですけどね。

まぁ、FOMC議長にして大恐慌の専門家に対しておこがましい意見かもしれませんが、、、彼の経済見通しは因果関係が間違っていると思うんだけどなぁ。
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by guranobi | 2010-10-16 09:56 | 米国
2010年 09月 18日

2010Q2 米国 Flow of funds

先月、1-3月までのFlow of fundsの状況を記事にしたけど、4-6月分が発表されたので概況をアップデート。

目につくところは、
- ABSの圧縮など、銀行部門の資産リストラは継続している模様。
- Home Equity Loanの削減も続いており、可処分所得に対する押し下げ効果は年率で▲0.6%(前期は▲1.0%)
- 海外部門がエージェンシー債・GSE-MBSの買い手になった。8四半期ぶり。


最初にABSとCPの状況。上がABSで、下がCP
ABSの圧縮はQ1ほどではないが粛々と続いている。負債サイドではABCP(前期比▲120億ドル)、社債(同▲970億ドル)ともに減少しているが、ABCPがほとんど残高が無くなってきたこともあり、社債削減が主体になっている。一方、資産サイドではモーゲージ(▲720億ドル)、エージェンシー債・GSE-MBS(▲290億ドル)と不動産関連が主体であり、消費者信用(▲120億ドル)は削減幅は少ない。ただし、削減率で見ると、モーゲージ ▲3.4%、消費者信用 ▲5.0%となっている。

CP市場の発行体を見ると、上掲ABCPが▲10.0%、銀行持ち株会社が▲3.4%、海外▲1.7%と軒並み減らしている一方で、非金融法人が+10.2%と2四半期連続で増やしている。
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前期Q1にABCPの発行残高が消費者信用を中心に急減し、その一方で銀行持ち株会社のCP発行が増えたのはオンバラが進んでいるためじゃないかと書いたが、実はFASBによってSPEのオフバラのルールが変わっていたらしい。
FASB Issues Statements 166 and 167 Pertaining to Securitizations and Special Purpose Entities

こんなことも知らなかったとは・・・

2010会計年からこのルールが適用されていて、その影響でFOFの数字も激変したということなんだろうが、、、
その影響が消費者信用を担保とするCPにしか現れていなくて、社債などの長期債務、あるいはモーゲージ担保のABSに影響が見られないということは、実は、このルール変更の影響はごく一部にしか及んでいなくて、モーゲージ担保のSPEなんかは未だ大部分がにオフバラされているのかしらん、と勘繰ってみたくなる。特に、ABSが持っている腐ったモーゲージなんかは、、、お目こぼし、なのかなぁ。


エージェンシー債・GSE-MBSで目についたのは、海外が保有を増やしたこと。「中国は外貨準備の構成を米ドルから日韓、欧州に分散している一方で、エージェンシー債も買っているよ~」という記事もあり、中国なのかな~。政治的な動きなのか、資産分散なのか、全く想像がつかん。けどまぁ、米ドルにとっては良いニュースかも。
WSJ: China’s Reserves Already Diverse, Citi Says

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最後にHome Equity Loan
HEL残高の可処分所得比率は8.8%と前期9.0%から低下。可処分所得に対する押し下げ効果は年率で▲0.6%と前期▲1.0%よりも幾分下がったが、まー、傾向は変わらず。
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以上っす
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by guranobi | 2010-09-18 12:13 | 米国