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カテゴリ:為替( 16 )


2010年 10月 03日

米国のIIP⑧・・・ラスト

たぶん、最後です。長々と失礼しました。


改めてIIP(International Investment Position)って、なんだろう?IIPが資産評価で改善したからと言って、どんな意味があるんだろうか?

対外資産が為替や株価の値上がりで上昇したとしても、その資産を売ってドルに換金するわけじゃないのでドル需給を改善させるわけじゃない。IIPの状況に関係なく、ドルの売買を左右するのは経常収支であり、対米投資であり、米国からの対外投資のフロー、実需なのだろう。

IIPが資産評価で改善したからと言ってドルが支えられるわけじゃない。

借金している人が持っている株が値上がりしても、カネ貸しにとってはその株を換金しなければ意味がない。それよりも借入人の日々の資金繰りを重視するだろう。株価の上昇は、多少の心の拠り所にはなるかもしれないが。

米国の対外赤字が構造的に拡大しているのならば、やっぱりドル需給は悪化してドル安圧力になるんじゃないか?それがIIPのポジション改善に繋がって、経常赤字にもかかわらず米国の対外ポジションは悪化しない、あるいは改善さえすると。これは債権国にとってはフラストレーションがたまることだろう。


米国のIIPが改善することの重要な意味は、債権国にとって購買力が落ちるということじゃないかと思う。
人民元高で中国が被った損失は3000億ドル程度。しかし、人民元高が進めば損失額はさらに膨らむ。
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んー、全く締まんないな。。。

中国の短期金融市場の改革とか、人民元の国際化、対外直接投資の動向とかも絡めたかったんですけどね、あえなく挫折です。

大変、申し訳ないです。

最後に、日本の経常収支累計額と対外純資産から逆算した損失額(購買力の喪失)は120兆円ほどです。これもまた、日銀のデフレ政策の功績。
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by guranobi | 2010-10-03 19:25 | 為替
2010年 10月 03日

米国のIIP⑦・・・適当なシナリオ

前の記事で見たとおりに、資産・負債の膨らみ具合、レバレッジの程度がかなりIIPに影響するので、シナリオを作ってもあまり意味はないと思うのですが、一応。

モデル化なんて到底ムリなので、竹中先生の論文を参考にさせていただいて、テキトーに数値を置いてシナリオを作ります。かなりアバウトなものなので、ご容赦を。

名目GDP・・・10年 3.2%、11年 3.0%、12-13年 3.5%、14年以降 4.5%
対外負債のインカム・リターン・・・名目GDPに同じ
対外資産のインカム・リターン・・・対外債務のインカム・リターン +1.2%で一定
対外資産のFinancial flow(経常収支、キャピタル・リターン以外の、グロスの増減)・・・GDP比+4.0を上限に緩やかに増加
対外負債のFinancial flow・・・対外資産のFinancial flow + 毎期の経常収支

対外資産のキャピタルゲイン
価格変化 +1.28%, 為替変化 ドル変化率の50%, その他 +1.23%
対外負債のキャピタルゲイン
価格変化 +1.28%, 為替変化 ドル変化率の5%, その他 -0.27%

よってキャピタルゲインのリターン格差はなし、その他の変化の格差は+1.5%

以上の仮定をおいた上で為替の変化率を年-3%から3%まで変えて、2030年のIIP/GDPを目標値にしてソルバーで年間の貿易・サービス収支を求めた。

たとえば、ドルの変化率がゼロのときに、2030年のIIP/GDPが20%となるためには、年間の貿易・サービス収支がGDPの▲3.7%であればいい。
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このうちの、ドル▲1%、0%、+1%のときの、2030年のIIP/GDPが20%、30%の推移はこんな感じ。
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ここで、実質実効ドルと米国の貿易・サービス収支の推移を見てみる。
03年ころまでは、実質実効ドルにおよそ2年遅れて米国の貿易・サービス収支が変化してきた。04-08年までは住宅バブルで内需が膨らんで、ドル安の効果が現れていなかった。リーマンショックでようやく赤字も本格的に減り始めたのだけど、従来のドルとの連動からはもっと減るべきなのに減っていない。逆に足下では赤字が再拡大し始めている。

竹中先生も指摘されているけれど、米国の対外赤字が構造的に拡大しているのかもしれない。
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by guranobi | 2010-10-03 15:50 | 為替
2010年 10月 03日

米国のIIP⑥・・・IIPに影響を及ぼす要因

さて、IIPはどのように推移するのか、IIPに影響を与える要因とは何か?

ここで、再び竹中先生のグローバル・インバランスとドル基軸通貨体制の行方を参考にさせていただきます。

p.60-61においてPTBR(Primary Trade Balance Ratio)という考えを示されているのですが、これは「対外純負債比率(IIP/GDP)が前年比で横ばいとなる貿易・サービス収支/GDP比率」と考えることができ、p.61の③式を変形して次の式で表される。

PTBR = l((1+r_l)/(1+g))-a((1+r_a)/(1+g)-1)・・・③'

l : 対外総負債/GDP比
a : 対外総資産/GDP比
r_l : 対外負債のトータル・リターン
r_a : 対外資産のトータル・リターン
g : 名目GDP成長率

ちなみに、l, a に09年の数値を、r_l, r_a, gに06-09年平均の数値を入れると、PTBRは▲4.7%となる。06-09年平均の資産・債務のリターン、名目GDP成長率のもとでは、米国はGDP比▲4.7%の貿易・サービス収支を続ければIIPの水準は09年と同じ19.4%で横ばいとなる。▲4.7%を上回る赤字を出せばIIPは悪化し、下回ればIIPは改善する。

06-09年平均の数値をベースに各要因のPTBRへの影響を見ると以下のとおり。
対外総資産/GDP比率が上昇(対外総負債/GDPも同率上昇)すればPTBRは低下する。すなわち、より大きな赤字をだしてもIIP/GDP比率を維持できる。あるいは、資産・負債のリターン格差一定のもとで金利水準が上昇すれば、PTBRは上昇する。名目GDP成長率が高まれば、PTBRは低下する。GDP成長率が高まればより大きな赤字を出してもIIP/GDP比率を維持できる。
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より正確には、③'式から以下のように求めることができる。

①r_a > r_l のときに、aとl の同率幅の上昇はPTBRを低下させる。
→資産リターンが負債リターンを上回るならば、貸借両サイドでの拡大はより高い投資収益を生み、IIPを悪化させることなく、より大きな貿易・サービス収支の赤字をだすことができる。

②l > a のときに、r_l, r_a の同率幅の上昇はPTBRを上昇させる。
→総負債が総資産を上回る(IIPがマイナス)ときには、資産・負債リターンの同率幅の上昇≒金利水準の全般的な上昇は、より低い投資収益となり、IIPを維持するためにはより小さな貿易・サービス収支の赤字でなければならない。

③a(1+r_a) > l(1+r_l) のときに、gの上昇はPTBRを低下させる。
→資産の総収益が負債の総収益を上回るときに、名目GDP成長率の上昇はより高い投資収益を生み、IIPを悪化させることなく、より大きな貿易・サービス収支の赤字をだすことができる。


このうち、①は特に重要だと思うんですよね。これまでの米国のように対外資産のリターンが対外負債のそれを上回っていれば、貸借両サイドでの(レバレッジ)拡大は当然、米国にメリットをもたらし、大きな貿易・サービス赤字を続けることができる。だけど、いったんリターン格差が逆転すればそれが大きな重しとなり、対外資産・負債の縮小圧力と、貿易・サービス赤字の抑制圧力が同時に働くことになる。

当たり前のことなんですけど。
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by guranobi | 2010-10-03 08:25 | 為替
2010年 10月 02日

米国のIIP⑤・・・キャピタル・リターン格差は持続可能か

結論から言うと「わかんない」なんですけどねw

米国のIIP改善の要因を、資産・負債それぞれの
①価格変化
②為替変化
③その他の変化

の3要因に分け、あわせたものを「キャピタル・リターン」とします。まず、資産・負債別のキャピタル・リターンの推移。
上段が年ごと、下段が3年平均です。年ごとでは変動が大きいので3年平均で見ると、比較的安定して資産のキャピタルリターンが負債を上回っている。
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次に、3要因に分ける。3要因それぞれの寄与度を資産-負債で表示している。
05年はこれまで説明したように「雇用促進法」によって一時的に高まっている。「その他の変化」だけでなく、「価格変化」にも現れているのかもしれない。
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なので、05年の「その他の変化」「価格変化」のリターン格差をゼロにしてみたw

右側の3年平均でトレンドを見ると、確かに竹中先生が主張されるように「為替変化」要因によってキャピタル・リターン格差は上下している。'96-'02では「為替変化」要因がマイナスとなり、資産・負債のキャピタル・リターン格差は縮小している。しかし、ゼロには概ねなっていない。やはり、キャピタル・リターン格差は「その他の変化」「価格変化」といった要因から安定的に発生している。
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「その他の変化(Other changes)」とは何か?
BEAの簡単な説明は次のようなもの。
" Includes changes in coverage, capital gains and losses of direct investment affiliates, and other adjustments to the value of assets and liabilities."

ここで、前に見た対外・対内FDIのインカム・リターン格差と、「その他の変化」の資産・負債格差の関係を見てみる。
「その他の変化」がFDIによってのみ生じているわけじゃないので相関性は低いんだが、、、ま、関係が全くないわけじゃなさそうで。(FDIのインカム・リターンと「その他の変化」を資産、負債別に見ると相関がゼロからマイナスなのは内緒ですw)

まー、論文書いているわけじゃないんでw、今後のFDIのインカム・リターン格差が足下と同様に5-6%程度生じると仮定すると、「その他の変化」要因によるキャピタル・リターン格差が1.0-1.5%程度、(寄与度で)生じるとしよう!
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(とりあえず、中断。たぶん、続く)
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by guranobi | 2010-10-02 20:52 | 為替
2010年 10月 02日

米国のIIP ④・・・米国のIIP改善の半分は欧州のIIP悪化?

だんだん疲れてきました。。。

次にキャピタル・ゲインを見る。先に書いたとおり、89年以降は対外資産・負債の評価差額が開示されており、それぞれ価格変化、為替変化、その他の変化、の3つの要因に分かれている。

米国のデータソースはUS BEA International Investment Positionですが、EURO圏についても同様のデータが公開されている。

ECB: Euro area international investment position and its geographical breakdown


ここで、米国のIIPが価格変化などの要因=キャピタル・ゲインによって改善しているのならば、どっかの国・地域がそれだけのポジションの悪化を見なければならない。米国の対外資産が改善しているのならば、その米国の投資を受け入れている国はその受け入れた投資を負債の増加=ポジションの悪化として計上しているはず、だと思う。ここらへんはIIPのガイドラインまで踏み込んで調べていないので怪しいんですが。。。
そうでないならば、米国のIIP改善というのは一方的な主張であり、実際のポジション改善とは言えないハズ。

で、そのポジション悪化のおよそ半分を引き受けているのはユーロ圏であるようなのですよ。

米国の対外ポジションは国別には公表されていないようなんだが、FDIは先に見たように公表されていて欧州が6割近い。うちユーロ圏は34%。株式投資もエマージング投資が増えているとしても、依然として先進国、特に欧州のウェイトが高い。よって、米国の対外資産の半分以上は欧州にあると考えていいんじゃないかと。

ユーロ圏のIIPは、データが取れる2000-08年の間に価格変化などの3要因によって1.5兆ドル相当の悪化となっており、この間の米国のIIP改善の半分を説明できるのです。


米国の対外資産≒欧州の対外負債、ではないかと考えて価格変化、為替変化、その他変化、その合計を並べてみた。
そうすると、かなり近い動きをしているんですよ。米国資産とEURO16の負債の価格変化はかなり近似している。米国負債とEURO16資産の価格変化も。

また、為替変化は逆方向になっていますがこれも米国がドル建て、EURO16がユーロ建てで評価しているので当然の動き。米国負債の為替効果が小さいんですが、これは米国の負債のドル建て比率が高く為替変化の影響を受けないため。

3要因の合計では米国とEURO16の動きはあっていませんがネットのIIPではかなり連動性のある動きとなっている(右下図)。
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これら3要因の2000年以降の累計をドル表示で比較してみた。
米国の08年までの累計効果2.5兆ドルのうち最も大きいのが「その他変化」要因であり、相当程度05年の「雇用促進法」の影響が出ている。次いで価格変化であり、為替変化要因は小さい。
ところが、EURO16では為替変化要因がIIP悪化の主な原因となっている。

この非対称性をどう解釈するか、わかんないんですよね~。米国とEUROでIIPの要因分類の仕方が違うのか、それとも通貨建てが違うためなのか。。。

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もちろん、EURO16のIIP悪化が全て対米資産によるものであるはずがなく、欧州の国別の対外ポジションから見ても、対英国やスイスでも一定のポジション悪化が生じていると考えるべき。それらを経由しつつ、世界全体では米国のIIP改善の相当程度を欧州、特にEURO圏が引き受けている、ということじゃないかな?とカンガエルんですが。

例えば、英国の国別IIPはこんなふうになっていて、対EUでは3647億ポンドの資産超過、スイスには▲792億ポンドの負債超過、米国には▲500億ポンドの負債超過、アジアには▲1540億ポンドの負債超過、と言う感じ。価格変化などのキャピタル・ゲインの循環もこれと似たような関係になっているもかもしれない。国別の詳細は公表されていないようなので、推測するしかないのだが。


少なくとも、米国のIIP改善はまるっきりのウソというわけじゃなさそうだ、とは言えるんじゃないでしょうか。
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by guranobi | 2010-10-02 20:09 | 為替
2010年 10月 02日

米国のIIP③・・・米国の対外FDIのリターンが高い理由

米国の対外FDIのリターンが高いのはなぜか?

これは、例によって人様の資料をパクらせていただきますw

国際通貨研究所:MOF委嘱「米国の対外投資分析と開発途上国及び我が国へのインプリケーション」

平成18年の資料ですが、優れた分析であり、現在についても十分に通用する内容。
このなかで米国の対外FDIリターンが高い理由を
①リスクプレミアム格差
②米国市場の競争性の高さ
③持ち株会社活用による節税効果
④再投資戦略の違いによる、米国海外法人の自己資本比率の高さ=財務コスト面の優位性
⑤米国と海外の法人税率格差
などによって説明している。

このうち①リスクプレミアムについてはあまり説得力を感じなかったが、その他については十分にありうること。
例えば、U.S. Direct Investment Abroad: Balance of Payments and Direct Investment Position Dataなどから米国の対外FDIの状況を国別に見てみると、FDIは先進国、なかでも欧州に偏っている。欧州で56%、うちEUが49%、Euro圏が34%となっている。他に、ラ米が19%、カナダ7%など。
09年のFDIによる受取利息・配当金のうちで持ち株会社によるものの比率が高いのはオランダ(84%)、ルクス(90%)、スペイン(73%)、シンガポール(55%)となっており、持ち株会社を特定国に集中して節税を行っている可能性は十分にありそう。
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また、CBOのデータ(ただし2005年)から、OECD諸国の法人税率と、米国からの対外FDIのインカム・リターンの関係を見てみるとこんな感じ。
赤丸は米国の対内FDIリターン(よって外国企業によるもの)。
相関性は必ずしも高くはないが、実効税率、投資優遇策などより詳細に確認すればもう少し説明力が上がるかも。わかんないけど。
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この点は、法人税率について別の視点を与えてくれるだろう。
米国では法人税率が高いためFDIリターンが低く、より低い税率の対外FDIのリターンが高い。それによって、投資収益の大幅なプラスを生み出しているのかもしれない。また、後に見るとおりにキャピタル・ゲイン(対外資産価格の上昇)を生むことで対外ポジション(IIP)の改善に寄与しているのかもしれない。

基軸通貨制、国内金融市場の厚み(資金吸収力)、国内企業の対外進出の巧拙、など様々な要因が絡むわけだが、米国にとっては比較的高い法人税率が投資収益の黒字に貢献しているかもしれない、というのは非常に興味深い視点ではないかな?


以上の各要因は構造的とも言えるものであり、今後も米国の対外FDIのリターンは対内FDIを相当程度上回ると考えていいんじゃないかと思ふ。
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by guranobi | 2010-10-02 19:20 | 為替
2010年 10月 02日

米国のIIP ②・・・インカム・リターン

次にインカム・リターンを見る。
インカム・リターンは(金利・配当等の)所得受取/対外資産・負債残高で計算する。

先に述べたとおり、インカム・リターンは所得収支として経常収支に含まれている。そのため累積経常収支とIIPの差にはインカム・リターンは関係ない。だけど、間接的には関係していると思う。

詳しくは調べていないんだがw、インカム・リターンが高い資産は時価評価においても「のれん」などで高く評価されるだろう。特に、時価が取れない資産、例えばFDI(海外直接投資, Foreign Direct Investments)の評価にはインカム・リターンが関係するんだと思う。


計算に際してデリバティブの扱いにちょっと迷いました。デリバティブは05年から計上されていて、リーターンを左右する。市場金利との比較から、今回はデリバティブを含めてで計算しました。金利収入を生まないであろう金準備や、ドル紙幣、さらにはSDR、IMF預け金は除外。SDR、IMFについては利息があるのかもしれないが、金額自体が小さいので全体に影響はほぼない。
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その結果は、これです。分かりにくいでしょうけど、米国資産のインカム・リターンが米国負債(外国の対米投資)を安定的に上回っています。右側を見ると、インカム・リターン格差は70-80年代と比較すると幾分低下(77-93年平均 2.0%→94-10年 1.3%)していますが、90年代からは横ばいで安定している。

また、為替との関係は、名目実効ドルとの相関性が-0.6766と比較的高い一方、EUR/USDとの相関性は-0.1845とあまり高くはない。
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次に、米国の所得収支の分類に従って、インカム・リターンについてもFDI、その他民間投資、政府、の3つにわける。すると、リターン格差を産み出しているのが主に米国の高い対外FDIリターンであることがわかる。

・・・てか、竹中先生はじめ各レポートが指摘していることなんだがw ま、続けましょう。
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この資産・負債それぞれに対する寄与度の差をとって、リターン格差の要因を見ると以下のとおり。
FDIのリターン格差が、インカム・リターンの格差のほとんどを説明できている。また、政府部門のマイナス寄与は米国債を保有する外国への支払いによるものだが、主に米国金利の低下に伴ってマイナス寄与度が小さくなってきている。これも、米国のインカム・リターン格差を維持する要因となっている。
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ちなみに、これが資産・負債の構成割合の推移(ただし、デリバティブ除き)。米国の対外資産のうち、FDIは70年代後半の50%超から25%程度に下がっている。この程度の資産がインカム・リターン格差のほとんどを生み出していることは驚き。また、対外資産のうち株式の比率が高まっており、これがキャピタル・ゲインのうちの価格効果を生み出していると思われる。
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by guranobi | 2010-10-02 16:32 | 為替
2010年 10月 02日

米国のIIP(International Investment Position)①

さて、挫折の記録をタラタラと書きます。

人民元についての記事でもご紹介した竹中正治先生の論文は非常に興味深い。
グローバル・インバランスとドル基軸通貨体制の行方
米国の経常収支不均衡の趨勢的シフトとその要因

今回は、1番目の論文に関して素人なりに調べてみました。
ごく簡単に言うと、経常赤字が発生した場合にはそれと同額の対外純債務を負う。しかし、米国は過去に生み出した経常赤字の累積額ほどには、対外純債務=対外ポジション(International Investment Position, IIP)の悪化は見られていない。

例えば、60年から09年までの米国の経常収支の累積額は▲7.7兆ドルの赤字だが、09年時点でのIIPは▲2.7兆ドルに過ぎない。差額の5兆ドルは?これも簡単に言うと、為替差益(ドル安効果)、対外資産の価格上昇などのキャピタル・ゲインによって生み出された=純債務が減った。

ちなみに、利息・配当金などのインカム・ゲインは所得収支として経常収支のなかに含まれているが、この所得収支も米国は黒字すなわち受取超過となっている。

このような米国のキャピタル・ゲイン、インカム・ゲインの高いリターンは比較的長期にわたって続いており、もし今後も続くのならば、多少の経常赤字が続いたとしても米国のファイナンスの安定性は問題なくね?ということになる。

で、その実態はどうなのよ?ということで・・・

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

最初にFact!から。米国の累積経常収支は上と同じく60年以降。対外ポジションのデータは76年分から公開されている。ソースはUS BEA International Investment Position

米国の累積経常赤字とIIPは90年代までは比較的パラレルに推移していたが、2000年代に入って経常赤字が拡大したにもかかわらず、IIPのGDP比率は20%程度で横ばいとなっている。09年時点での累積経常赤字のGDP比率は55%である(累積経常赤字7.7兆ドル/09年名目GDP14兆ドル)。これに対してIIPのGDP比率は19.4%に過ぎない。また、対外資産、対外負債のGDP比率は趨勢的に上昇しており、特に2000年代に入って加速している。ただし、05年以降、デリバティブが資産・負債ともに計上されているために押し上げられていることには注意。
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このような累積経常赤字とIIPの違いを生み出した理由は上に書いたとおり米国資産のキャピタル・ゲインだが、米国負債でもキャピタル・ゲイン(米国にとってはロス)が計上されているので、正しくは、資産・負債それぞれでのキャピタル・ゲインの差額によって生じている。
ソースは、上のBEAのページのChanges in selected major components of the international investment position, 1989-2009(エクセル・ファイル)

このデータは89年からなので、経常赤字の累積も89年から測りなおしてIIPとの差異の要因を見てみた。
ちょっと分かりにくいけど、資産・負債それぞれに、価格変化要因、為替要因、その他の要因にわけてある。
おもな要因は、米国資産の価格要因と、米国資産のその他の要因、そして米国負債の価格要因である。

ここで、「その他の要因」とは主に実現益であるらしい。05年に資産・負債ともに「その他の要因」が急増しているんだけど、これはブッシュ政権での「雇用促進法」によって在外法人から米国親会社への還流額に対する税率が、通常の35%から5.25%に1年間だけ引き下げられたため。
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・・・という大まかな状況を見ると、
米国は対外投資によるリターンが高いため、多額の経常赤字にもかかわらず対外ポジションは悪化しなかった。さらに、資産・負債を両建てで拡大させているため、もし対外資産の高いリターンを続けることができるならば、今後も経常赤字を計上し続けても問題な~い、ということになる。

あるいは、、、米国が、安い金利で資金を調達してより有利な投資を行うために、レバレッジを拡大させてきたヘッジ・ファンド型の国家になりつつある、という見方もできるかもしれない。

(続く)
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by guranobi | 2010-10-02 14:19 | 為替
2010年 09月 26日

人民元についてのとりあえずの考え・・・お詫びと訂正

竹中正治氏は、外国為替はこう動く: これから10年の編者および1・2章の著者であり、5章「中国の台頭と人民元の将来」の著者は西村陽造氏でした。

もちろん、ご覧になっているわけがないでしょうが、ここにお詫びと訂正をさせていただきます。
改めて、西村氏の人民元に関する見解に概ね同意します。
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by guranobi | 2010-09-26 17:01 | 為替
2010年 09月 26日

人民元についてのとりあえずの考え⑤

最後に、竹中氏の論説に対する若干の反論を。

まず、バラッサ・サミュエルソン効果が2010年代に本格化するだろうとの見方には基本的に同意します。しかし、その効果は2010年代後半から2020年代にかけて見られるだろうと思います。

中国のベビーブーマーは国共内戦などの影響から日本よりも10年ほど遅れて生じているため、第2次ベビーブーマーの発生も10年ほど遅れている。新卒供給のピークは現在から10年代半ばにかけて発生し、10年代半ば以降、新卒の供給は次第に減少する。よって、バラッサ・サミュエルソン効果が顕在化するのは10年代後半から20年代にかけてになるだろうと僕は考えます。竹中氏との違いは効果発生の時期のささやかな違いです。


バラッサ・サミュエルソン効果とはおおまかに次のようなものです。
貿易財の生産性上昇は非貿易財よりも高いため、貿易財産業はより高い賃金を提示できる。しかし、労働市場の供給力に制約があるときには、貿易財産業が提示する賃金上昇は非貿易財での賃金をも引き上げる。非貿易財の生産性上昇は貿易財産業を下回るため、非貿易財産業は商品価格を引き上げざるを得ない。結果、非貿易財産業の物価上昇が経済全体の一般物価を引き上げる。

ここで、、、バラッサ・サミュエルソン効果が典型的に見られたのは日本であり、その結果、日本円の実質実効為替レートは90年代なかばまで趨勢的に上昇しました。しかし、その他の新興国、例えば、韓国、シンガポール、メキシコなどでは実質実効為替レートの上昇は見られていないのです。
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ですから、中国においてバラッサ・サミュエルソン効果が起きる、ないしは人民元の実質為替の上昇が起きるとは限りません。バラッサ・サミュエルソン効果が実質実効為替レートに及ぼす影響は様々な検証があるようで、引き続き確認を要します。


もう1点は、人民元の国際化、決済通貨としての可能性に竹中氏は疑問を呈していらっしゃいますが、僕は予想以上に早いかもしれないと思います。

竹中氏が人民元の国際化に時間がかかるだろうと考える理由の1つは、貿易決済通貨としての人民元供給について外資系銀行が多くの制約を受けていることを挙げていらっしゃるようです。しかし、これは中国政府が大陸系銀行を支援するためだと考えれば、決して人民元国際化の制約にはならないように思います。まー、この点は解釈次第なのかもしれませんが。

すみません、酔っ払いながら書いているのでまとまりがない内容だったかもしれません。。。。

金利についてですが、固定相場制に近いフローティング・ペッグ制を取っている以上、人民元金利はは米ドル金利に相当程度、追随せざるを得ないと思います。そのため、金利差は資本移動のproxyにはならないと思います。この点もデータに基づく検証が必要な部分です。

あとは、、、もう少しデータの読み込みを行って記事を加えるかもしれませんが、、、ちょっと疲れました。
すみません、以上です。
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by guranobi | 2010-09-26 01:44 | 為替