グラの相場見通し

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2010年 08月 03日 ( 2 )


2010年 08月 03日

天然ガス価格の動向 ⑤ ガス発電の優位性

長期的には、2020年以降は中国のガス需要はガス価格を押し上げるだろう。
しかし、当面は中国のインパクトは限定的と見る。僕のいい加減な計算の、15年でのガス輸入70bcmは日本の100bcmよりも少ないし、カタール・豪州の(潜在的)供給力で十分に吸収できる。
米国のシェール・ガス供給力もあり、ガス価格は少なくとも3年、おそらくは2010年代半ばまでは低迷を続けると見る。

一方、中国の圧力は石炭市場で本格化している。
IEEJ:拡大する中国の石炭輸入
REUTER:China, Europe coal demand clash to boost price
中国は生産・消費ともに世界の50%を占めているが、昨年から本格的な輸入国に転じた。もはや恒常的に中国の国内炭価格は国際価格を上回っているようで、良質の炭田が減ってきて生産コストが高まっているんじゃないかと思う
雇用維持の観点からは石炭からガスへのシフトを急速に進めるわけにはいかないだろうけど、中国の石炭生産は鈍化し、増加分の多くを輸入に頼る可能性が高そうだ。

石炭市場での中国の圧力はガス市場でのそれを遥かに上回り、石炭価格はガス価格よりも割高な水準に留まると思う。
市場価格では、天然ガスと石炭の相対価格は2000年代は石炭の方が安かったので、石炭発電が急増した。しかし、既に足下ではそのような状況は逆転し、石炭の熱量ベースの価格は天然ガスの80%程度にまで上昇している。
もし、REUTERが伝えるように石炭価格が100ドル/トンに達し、天然ガス価格がHenry Hubで5ドル/MMBtuに留まるならば、両者の熱量ベースの価格はパリティになる。
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ここで、WEO2009のデータなどをもとに発電コストを比較する。
ガス発電はCCGT(コンバインドサイクル・ガス発電)であり、先進国の新規ガス発電では普及が進んでいるタイプ。
ガス価格が現在の欧米の市場価格(5~6ドル/MMBtu)と、LNGの輸送コスト(3~5ドル/MMBtu)を勘案して6~9ドル/MMBtu程度と想定すると、CCGTの長期限界費用は50~68ドル/MWhとなり、石炭のultra-supercritical発電(なんのことかは知らない・・・)を概ね下回るコストで発電できる。

このグラフでの石炭価格は一般炭のOECD平均輸入価格だと思われる。過去の市場価格とOECD平均輸入価格の比較、現在の市場価格→EIAデータなどからOECD平均の一般炭輸入価格は80-85ドル/トン程度で推移すると想定すれば、石炭発電の長期限界費用は65-68ドル程度に。

また、現在のブレント価格82ドルと熱量等価となる天然ガス価格は14ドル/MMBtuであり、その場合のガスCCGT発電の長期限界費用は95ドルと風力発電と同等のコストにまで跳ね上がる。
中国のガス需要は今後発電向けを中心に伸びるのだろうから、ロシアとの価格交渉は発電コスト面でも重要に。
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発電コストを初期投資コスト、マネジメント・コスト、燃料費に分けると、ガス発電は初期投資コスト及びマネジメント・コストが低く、燃料費の割合が高い。その分、ガス発電はガス価格に対する感応度が高くなる。
ガスCCGTの発電コストのうち燃料費の割合は60-75%にも達する一方、石炭発電は25-30%程度に過ぎない(Energy Technology Perspective 2008などから)。
それだけ、原材料価格下落の恩恵を得やすいのがガス発電というわけ


次はCO2ペナルティ≒炭素税を考慮した場合のコスト比較。
ここでの前提はガス価格が11ドル/MMBtu、石炭価格が95ドル/トン(いずれも2008年価格)。
鉄鉱石価格の動向などから初期投資コストは変わらないか若干上がっているはず。なので、ガス発電以外の総コストはあまり変わっていないと思われる。それに対して、ガスの発電コストは燃料費が11ドル→7ドル程度に下落すると発電コストは60ドル/MWh程度と圧倒的に安くなる。
そしてその場合には、CO2ペナルティ(炭素税)が30ドル/トンのケースでも、風力はおろか原子力に対しても優位性を持つ
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この点は、風力をはじめとするグリーンエネルギーに投資する場合には十分に留意するべきぢゃないかと思う。もちろん政策の後押しが下支えするかもしれないが、低価格のガスはグリーンエネルギー、特に発電関係の分野にとって強敵となるだろう。


コストや環境問題を別にしても、ファイナンス面からもガス発電は魅力的。
なぜなら、初期投資コストが極めて低く(石炭発電の3-4割、原子力の24%)さらに建設のリードタイムが短いので資金面の優位性がある。現在のように貸し渋りで資金調達が難しい局面ではなおさらにガスの優位性が魅力に映るはず。

・・・と考えると、これからガス発電が本格化し、リードタイム3年をおいた2014-15年あたりからガス需要が顕在化するのかなーと。
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by guranobi | 2010-08-03 23:42 | energy
2010年 08月 03日

天然ガス価格の動向 ④ 中国・ロシアの動向

また、JOGMECのレポートを引用させていただいて。

JOGMEC:中国:2010年エネルギー価格改革 ~天然ガス価格改革、新資源税試行~
中国は6月に天然ガス価格の改定を行った。平均+26%の引き上げ。インフレ圧力があるなかでのこの引き上げ幅は、たぶん事前の予想を上回る。中国のガス卸価格は輸入価格を下回っており、その差額は事業者(CNPC)が負担している。今回の引き上げは、近い将来のガス輸入急増に備えた処置でもあるハズ。

今回の卸価格の引き上げとガス市場価格の下落によって、中国での卸価格はほぼHenry Hubと同水準になった。しかし、著者によると中国の輸入価格はトルクメニスタンからのパイプライン、LNGともに高価格なので、まだ内外価格差はあるらしい。
だとすると、中国はロシアとのパイプライン輸入価格の交渉で譲れないだろう。輸入価格が高ければそれだけ国内の卸価格を引き上げなければならないが、それはインフレ圧力となるし、なによりも国民の不満のもととなる。また、原油価格等価よりも市場価格ベースのほうにこそ経済合理性がある。
天然ガス需要が急増する(している)中国は、今後さらにロシアからのパイプライン輸入に大きく依存せざるを得ない。長期的な影響の大きさを考えれば、軽々には妥協できない。

単なる損得問題以上に、政治の安定にかかわる問題なので中国が押し切ると思うが、どうだろう?

JOGMEC:ロシアから極東向けパイプラインが始動する
JOGMEC:中国:天然ガス不足への対応と近年発見された大型ガス田の開発状況

このレポートを読んでざっと考えると、

中国へのパイプライン供給は現在の計画に基づくと、既に完成しているトルクメニスタンからの第2東気西輸が拡張されて30bcm(2020年~)、ロシア西部から30bcm、東部(沿海州)から38bcmと、総計で2020年ころには100bcm規模に達する。

中国の天然ガス輸入は、ガス発電比率の上昇を勘案してWEO2009の予測を修正すると、2015年で70bcm、20年で200bcmに達すると見込まれる。(WEO2009年は中国のガス需要を07->30年平均+5.3%と非常に低く見ており、もともと現実的ではなかった。同予測では、15年輸入 40bcm、 20年 50bcm)。20年時点輸入200bcmのおよそ半分はロシア、トルクメニスタンからのパイプライン輸入が賄う計算に。
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08年の欧州の天然ガス輸入が、地域内取引を除いたネット輸入ベースで260bcmであることを考えると、中国は2010年代後半から急速に天然ガス貿易市場でプレゼンスを高めることになる。
IEA予測(WEO2009)では2030年での欧州の天然ガス輸入は400bcmと見込まれているが、中国は遥かにそれを上回る500bcm程度に達し、圧倒的な輸入国になる。


長期的に中国はロシアからのパイプライン輸入に依存せざるを得ない。一方のロシアは、日本のLNG更新は豪州でほぼ手当済み、韓国もある程度抑えている模様なので、中国の需要なくしては東シベリアのガス開発は進まない。
つまり、中露は東シベリアのガス開発に関して相互依存関係にある

中国がガス発電比率を2020年までに10%に引き上げると発表したのは、需要家としての自らの価値をロシアにアピールする狙いもあるだろう。
問題は価格に絞られているが、ロシアが主張する原油等価であれ、中国が求める市場価格ベースであれ、両者が妥協してパイプライン建設が進むと見るべきだろう。

なお、ロシアの欧州向けパイプラインはノルト・ストリーム、サウス・ストリームが稼働することを前提に引き続き欧州のガス輸入の6割を賄う見込み。
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by guranobi | 2010-08-03 22:13 | energy