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2011年 06月 13日

米国の貯蓄率は低下トレンド入り

米国の貯蓄率は過去1年の間、1%pほど低下して4月は4.9%となりました。そして中期的には、このまま低下トレンドを続けて14年末では3.0%程度、あるいは3%以下まで下がるんじゃないかと思います。

高齢化や生産性などの影響も考えてみたんですが、これらの要因についてはどうもよくわからん。。。後でグラフだけ付け加えます。

今回、貯蓄率の低下を予想する理由は、債務返済負担の低下です。今更ですが。。。
ストック面の分析が甘いのは、僕だったかもしれません。
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ふつう、貯蓄率は以下のように計算します。

貯蓄 = 可処分所得 - 消費支出
貯蓄率 = 貯蓄 / 可処分所得

所得のうち消費したものの残りが貯蓄。「1 - 貯蓄率」は消費性向です。貯蓄率の低下は消費性向の上昇であり、一般的には消費意欲の高まりだと解釈されます。

しかし、消費するためのカネは所得だけではありませんね。「借金」で得たカネも使う。あるいは、「借金」の返済を優先して消費を抑制することもある。今の米国のように。

・・・ということを考慮して、貯蓄率の計算の可処分所得に「借金の増減分」を加えて修正してみました。消費に使うカネが、所得と借金の両方から出てくると考える。念のためですが、フツーの貯蓄率が不適切というわけじゃなく、借金を加えて修正したものも合わせて趨勢を把握するほうがいいんじゃないか、ということです。

その修正貯蓄率が下の赤色の破線。所得に加える「借金」は消費者信用とホームエクイティローン(HEL)です。モーゲージ(住宅ローン)を加えていないのは、住宅ローンの大部分は消費じゃなくて住宅購入に回されるため。まぁ、米国では少なくない部分が消費に回されるようですが、HELで代用できますし、あまり深く考えない方向でw

第二次大戦後から2000年代まで趨勢的に修正貯蓄率は実際の貯蓄率を上回っています。そして、2000年代では実際の貯蓄率が急低下したのに対して、修正貯蓄率は比較的安定している。リーマンショック後は、実際の貯蓄率が急上昇している。これは金融が急速に収縮したので、借金返済に優先的にカネを使わざるを得なくなったため、と考えていいでしょう。
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そこで、まず、FOFの記事でも見た家計の債務負担の調整について仮定を置きました。消費者信用は11年末~12年前半にボトム、HELは13年末~14年にボトムを付けると想定。薄い色の部分が想定値です。やや楽観的かもしれませんが、大筋を考えるための仮定値ですから、お見逃しを。
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これに、雇用・労働時間・時間あたり賃金の想定値をベースとした可処分所得から、実際の貯蓄率の推移を計算するとこんな感じ。ベースとなる”修正貯蓄率”は4.5%で横ばいにしました。とりあえずの仮定値として。
今回の試算では、11年内は4.9-5.2%程度で横ばいとなり、12半ばから本格的に低下しはじめ、13年末に4.2%、14年末 3.4%、15年末3.2%
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ここで重要なことは、債務が減っている過程であっても、債務の減少額が小さくなれば(債務負担が小さくなれば)、貯蓄率の低下要因になるということ。これは過去1年の貯蓄率低下の主因でもありますし、今後も中期的に続くだろうと思います。
上の貯蓄率の試算値では11年内から12年半ばまでは横ばいとなっていますが、それは試算のなかでのブレのようなものです。11年内に貯蓄率の低下が続いたとしてもおかしくはありません。
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・・・以上のような点も、FEDメンバーが年後半の消費ピックアップを想定している理由なのかな~?
もしそうなら、「ストック面の分析が甘い気がする」とか書いてゴメンね、バーナンキ。だけど、そういった説明を見たことないんだよな~

それと、貯蓄率の低下が中期的に続くとしても、消費が加速するとは限らない。高失業率を背景とした時間あたり賃金の上昇率の鈍化が続くのならば、所得の伸びは暫くは低いだろうから。この点、簡単な記事を書くかもです。

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以下、余談のようなもの。

貯蓄率の長期的な推移と年齢構成を比較してみると、人口動態の変化は必ずしも貯蓄率の動向を決めているとは言いがたい。
下の1段目のグラフは15歳以上人口に占める中・高年齢の比率と、貯蓄率の推移。5歳階層別。2段目は全米の平均年齢の推移。
80年代以降、米国の高齢化と貯蓄率の低下が概ねパラレルに起きているように見える。しかし、30年代から70年代までは高齢化とは逆に貯蓄率は上昇している。
また、3段目のグラフは貯蓄性向が高いとされる30-55歳の人口比率と貯蓄率の比較。パラレルに見えますが、30-55歳の構成比は逆メモリなので、、、想定とは反対の動きなのです。
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また、米国の貯蓄率について考察を加えているこちらの記事を参考に全要素生産性(TFP)と貯蓄率についても考えた。生産性上昇率の加速が投資機会を拡大し、実質金利と貯蓄率の上昇に繋がる、という氏の指摘は興味深い。

research ahead: Demographics, the savings ratio and interest rates

過去の動向を見ると、生産性(ここではMFP)の鈍化が70年代前半に生じ、それが80年代後半からの貯蓄率の低下を生んだように見える。もっと深く考えたかったんだが、、、時間切れ。
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まぁ、人口動態や生産性の状況も、どっちかというと今後の貯蓄率のトレンドの低下を示唆しているように思える。なので、上の試算値はさらに低めに考えておきたいのです。
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by guranobi | 2011-06-13 00:38 | 米国


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