グラの相場見通し

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2011年 05月 30日

米国の雇用・物価見通しのアップデート

ちょうど半年前に米国の雇用・物価動向の見通しを作成しました。今回はそのアップデートで。
本来なら2月くらいに行うべきだったのでしょうけど。

米国の中期経済見通し? 雇用・物価動向

その見通しの結果は、、、外しました。見事に。
金利は「デフレ・リスクが高まる展開なので、実質金利は比較的安定する一方で、BEIの低下が特に短-中期セクターにおいて見られると思料。よって、再びブル・スティープの展開を予想」と書きました。しかし、この半年間の展開はせいぜいレンジ相場。足下は金利が低下しているけれど、これはデフレ懸念というよりも景気の失速懸念によるもの。

また、GDP+3.25%成長を前提として、失業率は11年末で9.6%と予想したけど、既に9.0%にまで低下。GDP成長率が想定よりも低かったのですが、成長率の下ブレは失業率の上ブレ要因ですから、実際には1%ほど失業率の予想水準は違っていた。この見込み違いの主因は労働参加率=労働供給が予想以上に急低下したため。

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労働参加率については前回の見通しでも十分に検討したつもりだったけど、それでも甘かった。
米国の景気回復の初期においては、失業率が低下しはじめた数カ月は労働参加率も低下する(下図の青色の囲みの時期)。今回は景気後退が深刻であったことから労働参加率は2011年も緩やかな低下を続けるだろうと考えていたが、12-1月の低下は予想以上だった。
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興味深いのは、労働参加率のトレンドは全くといっていいほど変わっていないこと。つまり、若年層・中年層の労働参加率が低下し、高年齢層の参加率は上昇を続けている。12-1月の低下を含めて、今回の景気後退および景気回復初期では、このトレンドが加速したに過ぎない。
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下図は青色が進学率(Enrollment rate, 逆メモリ)で、赤色が労働参加率。年齢階層別。
前回の検討でも指摘したが、米国では高等教育への進学率が80年代後半から上昇するとともに、若年層の労働参加率が趨勢的に低下している。景気後退期に進学率は上昇するが、それは就職先を見つけるのが難しいための労働市場からの”退避”という側面だけではないだろう。趨勢的な進学率上昇が景気後退を機に加速しているとも言える。
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まー、イロイロ考えてみて、労働参加率の見通しを修正。外した分だけ、単に引き下げたわけですが。
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そして、新しい労働参加率のもとでの予想はこんな感じ。ULCは前回の15年に▲1.3%という”過激”な見通しではなく、13-14年に▲0.1%程度という緩やかなディスインフレ・シナリオに修正。
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ただ、これでも現在の一般的な物価見通しよりもかなり下に見たものだろう。実際に、コアCPIのみならずクリーブランド連銀の刈り込み平均などを見ても物価はボトムアウトしたように見える。
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しかし、失業率と賃金上昇率の”加速度(前年比上昇率の前年差)”の関係は変わっていない。失業率6%を大きく上回る状況では賃金上昇率は着実に鈍化している。大幅なGDPギャップが存在するために、デフレ圧力が継続している。こういう構造的な背景があると考えなければ、足下の金利低下は理解しがたい動きだろう。
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なので、Fedは11年内はもちろんのこと、12年も利上げするべきではない。

だが、、、ご存知のとおり4月FOMCの議事録で出口戦略を詳細に検討していることから、早過ぎる利上げにFEDが傾くリスクは高い。
「今回は結論を出さずに、出口戦略の検討のみを行った」というFOMCが1年以上続くと考えるのは難しい。議論するばかりじゃないはずなんだよな・・・

これまでも度々グチってきましたが、バーナンキは過剰債務問題とかのストック面の分析が甘い気がするし、FOMC内の合議制という名のリーダーシップの不足も気になる。タカ派に押し切られるリスクはリアルだ。

FEDのBSとか、FOMCの議論の傾向とか、まめまめに検討しなきゃいかんのだろうな~
もうちょっと米国についてはゆっくりできると思っていたんだけど。。。
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by guranobi | 2011-05-30 00:51 | 米国


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