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2011年 05月 29日

省エネの果実を摘み取るのは産油国②

ところで、この”原油消費/GDP比による上限”という考えは1つの示唆を含みます。それは、この”上限”価格が成立するならば、「日本を含む消費国が省エネに努めエネルギー効率を改善しても、その果実は生産国に吸い取られる」ということを意味するからです。

一般的に、1国のエネルギー効率の改善の程度はエネルギー原単位によって示されます。

エネルギー原単位=1次エネルギー消費量 / 実質GDP

例えば、われわれ日本人は1人あたり1日に10万kcalの1次エネルギーを消費しています。人間の1日の摂取カロリーのだいたい50倍ですね。ちなみに、明治20年ころのエネルギー消費は1人1日あたり4000kcalです。
そして、1円のGDP(2000年価格、実質)を生産するのに投じている1次エネルギーは9.5cal。これは、第1次オイルショック時のおよそ6割の水準です。1人あたりの1次エネルギー消費、そして実質GDPは趨勢的には上昇していますが、エネルギー原単位はオイルショックを機に低下し続けています(ソース)。
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つまり、日本経済は省エネに勤しむことでより低いエネルギーしか必要としないはず。ところが、、、
日本のエネルギー消費のGDPに対する割合は第1次オイルショックのときと同程度の4%。
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4割も省エネしたはずなのに、原油価格が実質ベースで8割上昇しているため、結局は(名目)GDPに対するエネルギー支出の割合は変わっていない。
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これは単純な話で、

エネルギー消費額 / 名目GDP = (エネルギー消費量 / 実質GDP)*(エネルギー価格 / GDPデフレーター)

と分けて考えれば、右辺の第1項はすなわちエネルギー原単位、第2項はエネルギーの実質価格ですね。省エネに勤しんでエネルギー原単位を引き下げても、エネルギーの実質価格が上昇すれば、その効果は相殺される。省エネの効果はエネルギー価格の上昇を通じて産油国に移転してしまう。

そこで、エネルギー価格が最初に触れた”上限”価格にまで上昇するのならば、あるいは、OPECがこの”上限”を目安に原油価格を維持するのならば、どれだけ省エネに努めてもそれは無駄な努力に終わるのではないでしょうか。

ここに、日本が再生可能エネルギーに転換していくべき、真の国益上の理由があるんじゃないかと思うんですよね。CO2なんかは関係なく。
少なくとも、脱”石油”を目指すべきなんではないかと。OPEC/サウジに価格決定権が握られている原油に依存するのは、国益を損なうリスクが高いと思うんですよ。

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ところで、、、話がコロコロ変わって恐縮ですが、前に触れた”原油消費/GDP比による上限”というのはちと高すぎますね。特に米国の事情を考慮するとこの上限価格はたぶん、高すぎる。というのは一般消費者にとって最も身近なガソリン価格は、原油とは違った動きをしているからです。

次のグラフは、上段が米国における原油、天然ガス(Henry Hub)、そしてガソリンの実質価格です。1922-72年の平均を10とした指数で、対数表示になってます。
原油と天然ガスは実質価格で見ても、オイルショックを機に価格水準が切り上がっている。しかし、ガソリンの実質価格は2000年代半ばまでほとんど変わっていない。90年代までは下落すらしている。

この原油とガソリンの価格を比較したものが下段のグラフです。ドル/バレルで、こちらは名目。灰色の面グラフはガソリン価格に占める原油の価格です。
オイルショックを境に、原油/ガソリンの相対価格が急上昇している。つまり、原油価格の上昇を石油精製段階での生産性向上が吸収し、ガソリン価格への転嫁を防いだ。だからこそ、ガソリンの実質価格は変わらなかった。オイルショック後、現在にいたるまで米国の製油所数は趨勢的に減少し、かつ大型化していますが、これらは石油精製、中間段階での生産性上昇を意味します。
しかし、2000年代に入って再び原油/ガソリンの相対価格は上昇し、今やガソリン価格の70%は原油です。もはや中間段階の生産性向上によって価格転嫁を防ぐ余地は乏しく、原油価格の上昇がそのままガソリン価格に転嫁されやすくなっている。更に米国は課税水準が低いためにガソリンの小売価格が日欧の半分程度なので、原油価格の転化率が高くなる。
これが、米国において特にガソリン価格高騰が顕著で消費者心理を圧迫している背景だと思う。そしてリファイナリーの倒産が囁かれている背景でもある。
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米国の小売売上高の内訳を見ると、ガソリン・ステーションの売上高は食料品店と同じ規模なんですよ。食料品販売はこれ以外にも百貨店・スーパーや通販にも含まれるので、全く同じ金額というわけじゃないけど。
日本で感じる以上に、影響が大きいだろうな~
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・・・というふうに、石油精製段階での生産性向上による吸収余地がオイルショックのときよりも難しくなっているため、オイルショック時の石油消費額/名目GDPで算出された”上限”は、おそらくは高すぎる。その前に、消費者が値を上げるだろうと思うのです。

じゃ、ガソリン価格をも考慮して上限価格を算出したいことこなんですが、それは根性なしには難しかったのでした。
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by guranobi | 2011-05-29 00:23 | energy


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