2010年 10月 02日
だんだん疲れてきました。。。 次にキャピタル・ゲインを見る。先に書いたとおり、89年以降は対外資産・負債の評価差額が開示されており、それぞれ価格変化、為替変化、その他の変化、の3つの要因に分かれている。 米国のデータソースはUS BEA International Investment Positionですが、EURO圏についても同様のデータが公開されている。 ECB: Euro area international investment position and its geographical breakdown ここで、米国のIIPが価格変化などの要因=キャピタル・ゲインによって改善しているのならば、どっかの国・地域がそれだけのポジションの悪化を見なければならない。米国の対外資産が改善しているのならば、その米国の投資を受け入れている国はその受け入れた投資を負債の増加=ポジションの悪化として計上しているはず、だと思う。ここらへんはIIPのガイドラインまで踏み込んで調べていないので怪しいんですが。。。 そうでないならば、米国のIIP改善というのは一方的な主張であり、実際のポジション改善とは言えないハズ。 で、そのポジション悪化のおよそ半分を引き受けているのはユーロ圏であるようなのですよ。 米国の対外ポジションは国別には公表されていないようなんだが、FDIは先に見たように公表されていて欧州が6割近い。うちユーロ圏は34%。株式投資もエマージング投資が増えているとしても、依然として先進国、特に欧州のウェイトが高い。よって、米国の対外資産の半分以上は欧州にあると考えていいんじゃないかと。 ユーロ圏のIIPは、データが取れる2000-08年の間に価格変化などの3要因によって1.5兆ドル相当の悪化となっており、この間の米国のIIP改善の半分を説明できるのです。 米国の対外資産≒欧州の対外負債、ではないかと考えて価格変化、為替変化、その他変化、その合計を並べてみた。 そうすると、かなり近い動きをしているんですよ。米国資産とEURO16の負債の価格変化はかなり近似している。米国負債とEURO16資産の価格変化も。 また、為替変化は逆方向になっていますがこれも米国がドル建て、EURO16がユーロ建てで評価しているので当然の動き。米国負債の為替効果が小さいんですが、これは米国の負債のドル建て比率が高く為替変化の影響を受けないため。 3要因の合計では米国とEURO16の動きはあっていませんがネットのIIPではかなり連動性のある動きとなっている(右下図)。 これら3要因の2000年以降の累計をドル表示で比較してみた。 米国の08年までの累計効果2.5兆ドルのうち最も大きいのが「その他変化」要因であり、相当程度05年の「雇用促進法」の影響が出ている。次いで価格変化であり、為替変化要因は小さい。 ところが、EURO16では為替変化要因がIIP悪化の主な原因となっている。 この非対称性をどう解釈するか、わかんないんですよね~。米国とEUROでIIPの要因分類の仕方が違うのか、それとも通貨建てが違うためなのか。。。 もちろん、EURO16のIIP悪化が全て対米資産によるものであるはずがなく、欧州の国別の対外ポジションから見ても、対英国やスイスでも一定のポジション悪化が生じていると考えるべき。それらを経由しつつ、世界全体では米国のIIP改善の相当程度を欧州、特にEURO圏が引き受けている、ということじゃないかな?とカンガエルんですが。 例えば、英国の国別IIPはこんなふうになっていて、対EUでは3647億ポンドの資産超過、スイスには▲792億ポンドの負債超過、米国には▲500億ポンドの負債超過、アジアには▲1540億ポンドの負債超過、と言う感じ。価格変化などのキャピタル・ゲインの循環もこれと似たような関係になっているもかもしれない。国別の詳細は公表されていないようなので、推測するしかないのだが。 少なくとも、米国のIIP改善はまるっきりのウソというわけじゃなさそうだ、とは言えるんじゃないでしょうか。
by guranobi
| 2010-10-02 20:09
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