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2010年 10月 02日

米国のIIP(International Investment Position)①

さて、挫折の記録をタラタラと書きます。

人民元についての記事でもご紹介した竹中正治先生の論文は非常に興味深い。
グローバル・インバランスとドル基軸通貨体制の行方
米国の経常収支不均衡の趨勢的シフトとその要因

今回は、1番目の論文に関して素人なりに調べてみました。
ごく簡単に言うと、経常赤字が発生した場合にはそれと同額の対外純債務を負う。しかし、米国は過去に生み出した経常赤字の累積額ほどには、対外純債務=対外ポジション(International Investment Position, IIP)の悪化は見られていない。

例えば、60年から09年までの米国の経常収支の累積額は▲7.7兆ドルの赤字だが、09年時点でのIIPは▲2.7兆ドルに過ぎない。差額の5兆ドルは?これも簡単に言うと、為替差益(ドル安効果)、対外資産の価格上昇などのキャピタル・ゲインによって生み出された=純債務が減った。

ちなみに、利息・配当金などのインカム・ゲインは所得収支として経常収支のなかに含まれているが、この所得収支も米国は黒字すなわち受取超過となっている。

このような米国のキャピタル・ゲイン、インカム・ゲインの高いリターンは比較的長期にわたって続いており、もし今後も続くのならば、多少の経常赤字が続いたとしても米国のファイナンスの安定性は問題なくね?ということになる。

で、その実態はどうなのよ?ということで・・・

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最初にFact!から。米国の累積経常収支は上と同じく60年以降。対外ポジションのデータは76年分から公開されている。ソースはUS BEA International Investment Position

米国の累積経常赤字とIIPは90年代までは比較的パラレルに推移していたが、2000年代に入って経常赤字が拡大したにもかかわらず、IIPのGDP比率は20%程度で横ばいとなっている。09年時点での累積経常赤字のGDP比率は55%である(累積経常赤字7.7兆ドル/09年名目GDP14兆ドル)。これに対してIIPのGDP比率は19.4%に過ぎない。また、対外資産、対外負債のGDP比率は趨勢的に上昇しており、特に2000年代に入って加速している。ただし、05年以降、デリバティブが資産・負債ともに計上されているために押し上げられていることには注意。
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このような累積経常赤字とIIPの違いを生み出した理由は上に書いたとおり米国資産のキャピタル・ゲインだが、米国負債でもキャピタル・ゲイン(米国にとってはロス)が計上されているので、正しくは、資産・負債それぞれでのキャピタル・ゲインの差額によって生じている。
ソースは、上のBEAのページのChanges in selected major components of the international investment position, 1989-2009(エクセル・ファイル)

このデータは89年からなので、経常赤字の累積も89年から測りなおしてIIPとの差異の要因を見てみた。
ちょっと分かりにくいけど、資産・負債それぞれに、価格変化要因、為替要因、その他の要因にわけてある。
おもな要因は、米国資産の価格要因と、米国資産のその他の要因、そして米国負債の価格要因である。

ここで、「その他の要因」とは主に実現益であるらしい。05年に資産・負債ともに「その他の要因」が急増しているんだけど、これはブッシュ政権での「雇用促進法」によって在外法人から米国親会社への還流額に対する税率が、通常の35%から5.25%に1年間だけ引き下げられたため。
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・・・という大まかな状況を見ると、
米国は対外投資によるリターンが高いため、多額の経常赤字にもかかわらず対外ポジションは悪化しなかった。さらに、資産・負債を両建てで拡大させているため、もし対外資産の高いリターンを続けることができるならば、今後も経常赤字を計上し続けても問題な~い、ということになる。

あるいは、、、米国が、安い金利で資金を調達してより有利な投資を行うために、レバレッジを拡大させてきたヘッジ・ファンド型の国家になりつつある、という見方もできるかもしれない。

(続く)
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by guranobi | 2010-10-02 14:19 | 為替


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