2010年 07月 06日
日本のタイヤ輸入の総数は、90年代には1100-1200万本と横ばいだったが、2002年から2005年のわずか3-4年で2000万本超に急増した。しかし、輸入元の推移を見ると、横ばいの時期である90年代半ばには大きな変化が起きていた。輸入タイヤの50%以上(本数ベース)を占めていた米国は96年をピークに急速にシェアを落とし、足下ではわずか3%に過ぎない。代わって伸びたのがいわゆるアジアン・タイヤで、韓国は98年の3%から2002年には8%に、足下では12%。そして、インドネシアとタイは97年から2004年にかけてそれぞれ3%→37%、2%→14%となり、この両国あわせて輸入タイヤの50%を超えるようになった。 インドネシアとタイにはBSの工場がある。BSの系列店などでタイヤを見てみると、Sneaker SNK2などの低価格モデルや、中価格モデルでも小口径タイヤなどはメイド・イン・インドネシアやメイド・イン・タイのタイヤをフツーに売っている。 BSの戦略は、輸入国別の平均単価を見るとよりはっきりしてくる。1本あたりの輸入平均単価によってグルーピングすると、大まかに3つのグループに分かれる。1つ目は単価が5000-7000円/本の欧米諸国産、2つ目が3000円/本前後のアジアン・タイヤ、そして最後に2000円/本以下のインドネシア産(とタイ産)のグループである。 (ちなみに、米国の輸入単価でもこのグルーピングはある程度成り立つが、日本ほど明瞭ではない。日本、カナダ、韓国、メキシコといったOECD諸国からの輸入単価が60ドル/本程度、ブラジル産が50ドル、中国産が39ドル、そしてインドネシア産が32ドル(いずれも2008年)となっている。また、アジア諸国からの輸入単価は日本のほうが米国よりも30-45%ほど安くなっており、日本の輸入タイヤは米国よりも低価格品に偏っている。あるいは米国のタイヤ輸入はより広範な価格帯に広がっている。) 欧米諸国産は合わせたシェアが10%に満たないので無視するとw、アジアン・タイヤは中国産も含めて平均価格が大きく上昇している。2002年から09年への平均単価上昇率は、韓国+4%、台湾+68%、中国+121%と上昇している(韓国産はもともとの平均価格がアジアンの中では高かった)のに対し、インドネシア+26%、タイ+30%しか上昇していない。この間の原油、天然ゴム、鉄などの原材料価格の上昇を勘案すると、インドネシア産とタイ産のタイヤの単価は原材料価格の転嫁分しか上昇していない。それに対してアジアン・タイヤは、原材料価格の転嫁に加えて低価格品から中価格品への商品ラインナップの広がりを伴っているため、単価の上昇率が高いのだと思う。 BSはインドネシア産のタイヤは低価格品、タイ産のタイヤは低~中価格品、といった棲み分けを戦略的に行ない、この両国での高付加価値製品の生産を避けている。 なぜか? もちろん、日本の工場と雇用を守るためだろう。高価格品や、航空機用タイヤ、大型建設機器用タイヤなどの高付加価値製品はできるだけ日本の工場で行う。アジアン・タイヤとの価格競争上、どうしても国内生産が難しい低価格品はインドネシアやタイで行い、国内に輸入する。日本のタイヤ輸入比率が2005年までで上昇が止まり、その後は横ばいとなっているのは、BSが国内のタイヤ市場を上手に管理しているからだ、と思うのですよ。 BSが最近、インドネシア工場の生産能力増強を発表しました。たぶん、アジアン・タイヤの品質が上がってきて価格競争が厳しくなってきたので、インドネシア工場やタイ工場で生産するタイヤの価格帯を少し引き上げ、日本への輸入を増やすんじゃないかと思っているのです。 BS:インドネシア カラワン工場の生産能力を増強
by guranobi
| 2010-07-06 23:48
| 日本経済
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